老朽化住宅団地の改修プロジェクト、約4万カ所で新規着工

(中国)

北京発

2020年07月30日

国務院弁公庁は7月20日、「都市部の老朽化した住宅団地の改修を全面的に推進するための指導意見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(以下、意見)を発表した。意見では、2020年に全国で3万9,000カ所、700万世帯の老朽化した住宅団地(以下、老旧小区)の改修・改良・再開発(以下、改修。中国語では「改造」)に着手する。また第14次五カ年規画の期末(2025年末)までに、2000 年以前に建てられた、改修を必要とする老旧小区の改修を終えるという目標が示された。

老旧小区の改修は、5月に開催された全人代の政府活動報告に「有効投資の拡大」の施策として盛り込まれていたもので(2020年6月1日記事参照)、今回の意見によって、改修の目標や対象範囲、内容、資金拠出方式などが具体化された。意見によると、改修の対象となる老旧小区とは、建築後、長期間経過し、維持補修がされず住民の改修要望が強い、などの条件を有する住宅団地を指す。

改修は、「基礎類」「整備類」「向上類」に分類される。「基礎類」には、外壁や階段などの修理、市政インフラ整備に係る上下水道、電力、ガス、道路、消防、光ケーブルなどが含まれ、「整備類」には、エレベーターの増設、緑化、照明、駐車場、電動自転車・自動車の充電施設、宅配便用スマートボックス、運動施設など、「向上類」には、公共施設のスマート化、養老・育児施設、コンビニエンスストアの設置などが含まれている。

改修の資金については、受益者負担の原則に基づき、住民と政府、企業が共同で負担する方針が示された。住民が資金を拠出する方法について、直接出資や寄付、労役の提供、住宅専用補修資金の使用、住宅団地の公共収益譲渡などの方式を整備する(注1)。また、住民は団地の改修と併せて、自宅内部のリフォームや家電の買い替えを行うことも奨励される。

中央政府は、主に2000年以前に建設された老旧小区の「基礎類」のプロジェクトに対して補助を行う。また、地方政府は、専項債(地方特別債)を発行して改修資金に充てることができる。さらに、国家開発銀行や農業発展銀行、商業銀行も、改修を行う企業やプロジェクトに対して融資などの支援を行うものとされた(注2)。

中原地産の張大偉首席エコノミストは、老旧小区の改修が住民の生活環境を改善し、生活の質や満足度を向上させる、と評価している。また、住宅の資産価値向上も期待できると指摘し、改修は民生を保障するのみならず、投資・雇用の安定にもつながり、消費の牽引効果も期待できるプロジェクトだとしている(「環球網」7月20日)。

(注1)エレベーターの増設などは、住宅積立金を引き出して資金に充てることができるとされている。

(注2)政策金融機関である国家開発銀行は吉林、浙江、山東、湖北、陝西省の各省と、中国建設銀行は重慶、遼寧省瀋陽、江蘇省南京・蘇州、安徽省合肥、福建省福州、河南省鄭州、湖南省長沙、広東省広州の各都市と、老旧小区改修への民間参入支援に関する提携契約に調印し、今後5年以内に両行合わせて4,360億元(約6兆5,400億円、1元=約15円)の融資を行うとしている。

(趙薇)

(中国)

ビジネス短信 f7425f2601e56bb4