フィリピンで反テロ法が発効

(フィリピン)

マニラ発

2020年07月21日

フィリピンで7月18日、テロリズムを防ぐことを目的とする「反テロ法」が発効した。同法案は、2007年に制定された「人間の安全保障法」に代わるもので、警察や軍など治安当局が令状なしで被疑者を拘留できる期間が3日間から最長24日間に延長される。また、従来は、警察などの治安当局が拘束した被疑者が無罪と判明した場合、政府から補償金が支払われていたが、新法では当事者が政府に損害賠償を請求しない限り補償は得られなくなる。さらに、ネガティブな情報発信によって社会に不安を与えることもテロ行為とみなされること、などが規定されている。

本法については、適用範囲が広くて曖昧なため、国連人権委員会や複数の非営利団体から「恣意(しい)的な運用で人権が侵害されるリスク」を懸念する声が上がっている。

新法導入でさらに治安を強化

ロドリゴ・ドゥテルテ大統領は自ら陣頭に立って、汚職や麻薬、テロの撲滅を指揮している。超法規的な取り締まりや刺激的な発言が頻繁に報道されるため、海外ではドゥテルテ大統領についてネガティブなイメージが広まっているものの、現地での支持率は80%前後と非常に高い。現政権は、地方分権促進や低所得者支援に関する政策が多いにもかかわらず、治安改善などの実行力が評価されて、高所得者層や女性からも高い支持を得ている。広い層から高い支持率を得て、2019年5月の中間選挙では、大統領陣営が圧勝した。今回、さらに治安を強化する理由について、大統領府は「旧法は現状に対応できていなかった。反テロ法によってテロの脅威から国民を守り、安全な社会を実現したい」としている。

(石原孝志)

(フィリピン)

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