IVA・IEPS保税認定の恩典を大幅削減、保税滞留期間の短縮に注意

(メキシコ)

メキシコ発

2020年07月28日

メキシコ大蔵公債省は7月24日、2020年度の貿易に関する一般規則(RGCE2020)の第1次改定を官報公示した。この改定により、国税庁(SAT)の企業認定スキーム登録制度(RECE)の1つであるIVA・IEPS保税認定の恩典が大きく削減された。IVA・IEPS保税認定は、輸出向け製造・マキラドーラ・サービス業振興プログラム(IMMEX)などを活用して部品や原材料などを一時輸入する企業が、付加価値税(IVA)や生産サービス特別税(IEPS)を保税にすることを主目的とする(2014年1月30日記事参照)。しかし、2016年5月のRECEの大幅な再編に伴い、保税以外の恩典が拡充されていた(2016年6月1日記事参照)。今回の改定は2016年とは逆であり、恩典の数を大幅に減らすものだ。

削除される恩典は添付資料の表のとおりだが、特に重要な変更は、IVA還付迅速化の恩典と保税滞留期間延長の恩典がともになくなることだ。IVA・IEPS保税認定企業には、カテゴリーに応じて一般の企業よりもIVA還付の法定審査期間(申請から40営業日以内)が短くなる恩典があったが、これが消滅する。アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領は新型コロナウイルス感染の危機で資金繰りに苦しむ企業への対策として、IVA還付を迅速化することを4月5日に約束した(2020年4月7日記事参照)が、実際の還付は依然として遅延しがちだ。従来は「AAA」カテゴリーの企業であれば、一般の企業に比べると還付がかなり早く行われることが進出日系企業の実績からも確認できていたが、今後はその効果が期待できない。さらに、IMMEXを活用して輸入した一時輸入在庫の保税滞留期間が従来の36カ月から18カ月に短縮されるため、在庫管理に注意を払う必要がある。「AAA」カテゴリーの企業には、国内の他のIMMEX企業などからバーチャル輸入調達(注1)した部材の保税滞留期間が6カ月ではなく36カ月になる恩典もあったが、これもなくなる。なお、今回の改定は7月27日に発効したが、付則第2条に基づき、現時点で有効な認定を持つ企業については現行認定の有効期限までは引き続き従来の恩典を享受できる(更新時に恩典は消滅)。

「AEO」認定に通関上の恩典を集約

今回の改定でIVA・IEPS保税認定の恩典は大幅に削除されたが、認定経済事業者(「AEO」、あるいはスペイン語で「OEA」、注2)の恩典はおおむね変更されていない。AEO認定を持つIMMEX企業の場合、自らが一時輸入した部材、国内企業からバーチャル調達した部材にかかわらず、従来同様に36カ月の保税滞留期間が認められる。IVA・IEPS保税認定の恩典が大幅に削除されたことでAEOの恩典が際立つようになったため、物流セキュリティーの安全性が確保されたAEO認定企業の数を増やす目的があるものと思われる。

(注1)IMMEXプログラムに登録した企業の間では、一時輸入した部材やそれを活用して生産した製品を他のIMMEX企業に「V1」申告コードでIVAを転嫁することなく移転(販売)することができる。これを通称「バーチャル輸出入オペレーション」と呼ぶ。

(注2)税務や通関ルールの順守に加え、物流セキュリティーのコンプライアンスが確保された事業者に対して通関上のさまざまな恩典を与える企業認定制度。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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