G20による貿易制限、2019年の件数は3年ぶりに減少するも、高水準を維持
(世界)
国際経済課
2020年07月01日
WTOは6月29日、G20の貿易関連措置に関する第23回モニタリングレポートを発表した。これによると、G20諸国が2019年10月中旬から2020年5月中旬にかけて導入した貿易制限的措置(注1)の件数は31件だった。2019年通年の件数としては、3年ぶりに減少に転じたことも判明した(添付資料図1参照)。他方、上記の集計期間に同措置の対象となった貿易額は4,175億ドルと、過去3番目の規模を記録した(添付資料図2参照)。この金額のうち、50.8%が米国による対中追加関税、16.8%がインドによる特定品目の輸入関税引き上げ、15.7%がアルゼンチンによる統計税(注2)引き上げに起因するとWTOは分析している。その結果、2009年以降に導入され、現在も有効な貿易制限的措置が対象とする貿易額は、G20の輸入総額の10.3%に上るとWTOは推計した。
一方、G20諸国は同集計期間中に、関税引き下げや通関手続きの円滑化といった貿易緩和的措置も30件(7,359億ドル相当)導入し、この規模は2014年以降で最大となった。今回のレポート発表に際して、WTOのアゼベド事務局長は「歴史的な水準を保ったままの貿易制限には懸念が残る」としつつも、新型コロナウイルス感染の拡大段階で急速に広まった貿易制限が撤廃されつつあることを受け、「こうしたポジティブな動きを維持するには、G20をはじめとした各国・地域の一層の努力とリーダーシップが求められる」と指摘した。
WTOはレポートの中で、上記の貿易制限・緩和的措置とは別に、新型コロナウイルスに対応すべく導入された措置が5月中旬までに93件あったと発表した。うち、医療用品へのアクセス拡大のために水際措置を緩和した例が65件と約7割を占め、禁輸も含めた貿易制限的措置(28件)を大きく上回った。ただ、この28件のうち、今回のレポート発表時点までに撤廃されたものは約4割にとどまる。
(注1)貿易救済措置と新型コロナウイルスに関連した措置はこの件数に含まない。
(注2)統計作成コストを賄うために、消費財の輸入および一時輸入に関し輸出入事業者に課す費用。
(吾郷伊都子)
(世界)
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