マーティン共和党党首が新首相へ、約4カ月半を経て3党連立政権が発足

(アイルランド)

ロンドン発

2020年07月01日

アイルランド議会は6月27日、新たな首相を選出する投票を実施。第1党である共和党(フィアナ・フォイル)のミホール・マーティン党首が新首相に選ばれた。2月8日に行われた下院総選挙(2020年2月12日記事参照)では、レオ・バラッカー首相(当時)率いる与党・統一アイルランド党(フィナ・ゲール)が第3党に転落。最大野党・共和党が第1党となったことに加え、左派野党のシン・フェインが第2党へ躍進したことで、その後の政権樹立の行方が注目されていた。4カ月半を経て、共和党、統一アイルランド党、第4党の緑の党による3党連立新政権が発足。過去に南北アイルランドの統一を求めてテロ行為を繰り返したアイルランド共和国軍(IRA)の流れをくむシン・フェインは連立から除外された。

新政権では、バラッカー前首相を副首相と企業・通商・雇用相に、緑の党のエイモン・ライアン党首を気候変動対策・通信ネットワーク・運輸相に任命。パスカル・ドノフー財務相と、サイモン・コーブニー外相(ともに統一アイルランド党所属)は続投する(注)。外務・通商省の通商部門は企業・通商・雇用省に移管されるなど、一部の省では機能再編も行われている。

今後の政策についてマーティン新首相は、新型コロナウイルスの感染拡大により疲弊した社会・経済・文化面の回復を最重要課題に掲げており、北アイルランドとの緊密な連携継続についても前向きな姿勢を見せている。29日の閣議後の会見では、国内の景気回復と雇用拡大を目的に、7月に数十億ユーロの新たな景気刺激策を発表する考えを明らかにした(「アイリッシュ・タイムズ」紙6月29日)。

連立政権樹立に当たっては、3党が最終合意した6月15日に、マーティン首相が2022年12月15日まで首相を務めた後、統一アイルランド党党首を首相に指名する取り決めがなされており、バラッカー副首相が2年半後に再び首相へ就任する見通しだ。同副首相は総選挙で敗北したものの、その後政権運営を続ける中で政府の新型コロナウイルス対策が国民から高く評価されていた。「アイリッシュ・タイムズ」紙が6月16日に発表した世論調査では、総選挙前の前回2月3日の結果に比べ、政権支持率は51ポイント上昇して72%へ、バラッカー首相(当時)個人への支持も45%ポイント上昇して75%と、記録的な支持の回復を見せていた。

(注)全閣僚の一覧は、アイルランド政府ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照。

(杉田舞希、尾関康之)

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