オンライン仲介サービスなどに対する初のEU規制、適用開始へ

(EU)

ブリュッセル発

2020年07月13日

オンライン仲介サービスや検索エンジンなどのプラットフォームを提供する事業者とその利用企業との取引関係(P2B: platform-to-business relations)を規制する初のEU規則(P2B規則)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが7月12日から適用を開始した。

この規則は、EU加盟国間のデジタル市場の統合を進める「デジタル単一市場(DSM)」戦略(2019年5月30日記事、2017年9月15日付地域・分析レポート特集参照)の一環で、プラットフォームを利用する中小企業に向け、より公正で透明かつ予測可能なビジネス環境の整備を目指す。

欧州委員会は、世界的な大企業などのプラットフォーム事業者がその圧倒的な交渉力に基づき、プラットフォームを利用する中小企業に対して不当な取引慣行を強要する事例や、そのような慣行に対する効果的な紛争解決制度の欠如などを問題視。これによる経済損失を最大23億5,000万ユーロと試算する。P2B規則の適用により不当な取引慣行を改善し、プラットフォームの技術革新の阻害要因にもなり得るこうした損害を軽減したい考えだ。

不当な取引慣行の禁止や透明性確保が目玉

P2B規則は、特定の不当な取引慣行への対策として、オンライン仲介サービス事業者が明確な理由なしに、あるいは不服申し立てができないかたちで、利用企業のアカウントを一時停止、または解約することを禁止する。オンライン仲介サービスの利用規約(terms and conditions)はアクセスが容易かつ平易な言葉で明記されている必要があり、その変更には遅くとも15日前の通知が求められる。

また、プラットフォームの透明性を高める対策として、プラットフォーム内に商品のランキングを表示する場合、売り手である利用企業がそのランキングを販売促進に活用しやすくするために、オンライン仲介サービス事業者や検索エンジン事業者にはランキングを決定する主要な要素を開示する義務を課す。オンライン仲介サービス事業者や検索エンジン事業者が自社の運営するプラットフォーム内で、売り手である他の利用企業と競合するかたちで自ら商品を販売する場合、自社が享受している優位な条件を全て開示しなければならない。また、オンライン仲介サービス事業者がサービスの提供過程で収集している情報に関して、その情報の種類や活用方法、特に他の企業への提供方法などの開示も求める。

さらに、全てのオンライン仲介サービス事業者(一部のごく小規模なものを除く)に対し、紛争解決制度の設置を義務化する規定や、オンライン仲介サービス事業者や検索エンジン事業者による報復措置の防止と裁判費用の軽減などを目的として、P2B規則の不履行時に業界団体などが各事業者を訴えることを可能とする規定なども含んでいる。

(吉沼啓介)

(EU)

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