上半期の貿易、主要国・地域の中でASEANとの貿易は堅調

(中国)

北京発

2020年07月17日

海関(税関)総署の7月14日の発表によると、中国の2020年上半期の貿易総額(ドル建て)は前年同期比6.6%減の2兆297億ドルとなった。うち、輸出は6.2%減の1兆988億ドル、輸入は7.1%減の9,310億ドルで、1,678億ドルの黒字となった。元建てでは、総額が3.2%減、輸出が3.0%減、輸入が3.3%減となった。

ドル建ての単月の輸出入額の推移をみると、輸出は4月に前年同月比でプラスに転じた後、5月にマイナスに戻っていたが、6月は微増(0.5%増)となった。輸入は6月が2.7%増となり、2020年に入って初めて単月でプラスになった(注1)。

税関総署の李魁文報道官は、新型コロナウイルスの影響で防疫物資や在宅勤務用のノートパソコンなどの輸出が伸びたこと、原材料価格の下落や中国国内の操業再開・経済復興加速に伴う原料需要の増加、大豆などの農産品購入などにより輸入が増加したことを指摘した。さらに、越境電子商取引(EC)(注2)や「中欧班列」(注3)による貿易が増加していることも取り上げた。

主要国・地域別では、ASEANが第1四半期に引き続き、最大の貿易相手となった(添付資料表参照)。李報道官は、同地域では新型コロナウイルスの流行が相対的に抑えられていること、ACFTA(注4)のグレードアップなどによる経済協力の深化、ベトナム、マレーシア、シンガポールとの産業チェーンの緊密化などを要因として挙げ、集積回路の貿易が対ASEAN貿易の伸びを牽引したと指摘した。

対米貿易は、輸出が11.1%減、輸入が4.8%減となった。李報道官は、対米輸入の減少幅は輸入総額の減少幅よりも小さいと指摘し、米国と共同して米中経済貿易協議の第1段階合意を実行すると述べた。

海外での感染再拡大リスクや米中摩擦により、下半期の見通しは不透明

2020年下半期の貿易について、李報道官は、IMFや世界銀行などの機関が2020年の世界経済をマイナス成長と予測し、WTOが2020年の世界のモノ貿易を2桁以上のマイナス成長としていることを挙げ、依然として複雑で厳しいとの見方を示した。

商務部国際貿易経済合作研究院国際市場研究所の白明副所長は、国内の輸出型企業は既に操業を再開しており、供給面に問題はないが、海外での新型コロナウイルスの感染再拡大の可能性や米中関係など、需要面の不確実性が大きいと指摘した。中国国際貿易促進委員会(CCPIT)研究院国際貿易研究部の趙萍主任も、中国の貿易は既に最悪期を脱したものの、不確実な要素が多く依然として楽観はできない、との見方を示している(「21世紀経済報道」7月15日)。

(注1)税関総署は2020年1~2月の数値を合計して発表しており、1~2月は前年同期比の伸びとの比較。

(注2)税関総署の発表によると、2020年上半期の越境ECによる貿易は26.2%増、うち輸出は28.7%増、輸入は24.4%増となっている。

(注3)中国と欧州を結ぶ貨物鉄道。税関総署の発表によれば、2020年上半期に中欧班列を利用して輸出・輸入された貨物は30.9%増の510万5,000トンだった。

(注4)中国とASEANとの自由貿易協定(FTA)。2019年10月22日に、中国とASEANとの間の「中国・ASEAN全面的経済協力枠組協定」とその関連協議を修正する協定、が全ての協定参加国により承認され発効した。

(小宮昇平)

(中国)

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