中国政府、成都の米総領事館を閉鎖、米中対立激化の懸念高まる

(中国、米国)

北京発

2020年07月29日

中国外交部は7月27日、中国政府の要求により、同日午前10時に四川省成都市の米国総領事館が閉鎖されたと発表した。米国政府がヒューストンの中国総領事館を閉鎖したことに対する中国側の対抗措置で、中国側の主管部門が同領事館の閉鎖後に接収管理を行った(2020年7月27日記事参照)。

外交部は7月24日、駐中国米国大使館に対し、中国政府が成都市の米国総領事館の設置と運営許可を取り消し、全ての業務と活動を停止するよう通知していた。

外交部の汪文斌報道官は同日の記者会見で、今回の措置をとった理由について、米国がヒューストンの中国総領事館を閉鎖したことを念頭に、「米国の不当な行動に対する必要かつ正当な対応であり、国際法と国際関係の基本的規範や外交慣例に適う」と主張した。

さらに汪報道官は、「同総領事館の一部の館員が中国の内政への干渉や中国の国家安全を毀損(きそん)する活動を行った」と指摘し、「中国政府はその件について、何回も交渉を申し出た経緯があり、米国政府も当然熟知している」と説明した。

米国政府は、新疆ウイグル自治区における人権侵害やチベット自治区への入域制限を理由に、中国政府・共産党の関連当局者や企業に対し制裁措置を発表し、中国政府もそれに対し対抗措置をとるというかたちの応酬が続いており、両国間での対立が激化している。

今回、中国政府が成都の総領事館を閉鎖した背景について、香港城市大学法学院の王江雨教授は、「同領事館は米国が中国に開設している領事館のうち最も西に位置するものであり、米国が新疆ウイグル自治区やチベット自治区などに対して行う情報収集に寄与している」と指摘した(「聯合早報」7月25日、注)。

また中国人民大学国際関係学院の時殷弘教授は、今後トランプ政権がとり得る措置として、(1)香港や新疆ウイグル自治区の問題を理由に法的制裁を加える、(2)中国が米国に対し、影響力の拡大や情報の窃盗をしていると糾弾する、(3)南シナ海において軍事衝突を引き起こす、(4)ドイツやフランス政府といっそう協調を深め、ファーウェイなど中国のハイテク企業を締め出すなどさまざまな面で中国に圧力を加える、などを挙げており、今後米中の対立が一層激化するとの懸念が高まっている。(「聯合早報」7月25日)。

(注)成都市にある米国総領事館の管轄地域は、四川省、雲南省、貴州省、チベット自治区および重慶市。

(藤原智生)

(中国、米国)

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