南ア政府、経営難に陥る南ア航空の救済を発表、国内からは反対意見も

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2020年07月21日

南アフリカ共和国の公共企業省は7月16日、プレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)において、会社更生法の適用下におかれている国営南アフリカ航空の救済に向け、財務省が資金面での支援を行う意向であることを発表した。

過去十数年にわたり赤字経営が伝えられてきた同社は経営状況の悪化により、2019年12月に会社更生法が適用され、2020年2月に経営再建の一環として国内線および国際線の運航の大幅な減便・縮小を行った(2020年2月18日記事参照)。その後、国内での新型コロナウイルス感染拡大を受けて3月27日から実施されたナショナル・ロックダウンにより国境が閉鎖されるとともに、国内線・国際線の全て(在外南ア国民の帰還便を除く)の運航が停止。6月1日からの経済制限の緩和により、ビジネス客向けの国内旅客便の一部運航再開は認められたが(2020年6月3日記事参照)、経営難に追い打ちをかけるコロナ禍による収益の大幅な減少により、ナショナル・フラッグキャリア存続の可否に注目が集まっていた。

政府の専門家が策定した南ア航空の救済計画によると、経営再建のためには総額101億ランド(約646億円、1ランド=約6.4円)が必要と試算されており、公共企業省はこれらの資金は賃借対照表の健全化、グループ会社の建て直し、リストラの対象となる2,700人の従業員向けの退職金などに充てるとした。また同省は、新生南ア航空においても政府は一定の株式を保有する意向だが、国内・海外投資家からの資本参画も歓迎するとし、資産の流動化の意向も示した。

しかし、先の南ア航空経営再建向けの予算は、6月に財務省が発表した補正予算案において計上されておらず(2020年6月26日記事参照)、さらなる国庫負担と財政赤字の拡大、国際的信用低下を招く恐れがある今回の発表に、経済界、野党双方から反対の声が上がっている。国内最大級の経済団体であるビジネス・リーダーシップ・サウスアフリカ(BLSA)のブスィスィウェ・マブーソ最高経営責任者(CEO)は、「コロナ禍により過去100年で最大の景気悪化が見込まれる中で、南ア航空へのさらなる資金支援は全く理解ができない」と意見を示すほか、第1野党民主同盟(DA)はティト・ムボウェニ財務相への提訴も辞さないと強く抗議している。

(高橋史)

(南アフリカ共和国)

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