デング熱患者増加の懸念

(中南米)

米州課

2020年07月09日

新型コロナウイルス感染者数が急速に増加している中南米で、デング熱患者の増加も問題となっている。汎米保健機構(PAHO)が公表している週次データによると、2020年の中南米域内のデング熱患者数(デング熱の疑いのある患者数も含む)は、1月1日から7月4日までの約半年間で173万1,6561人を記録している。この数字は史上最多の患者数を記録した2019年の約55%に相当しており、2020年も2019年並みのペースで推移している。域内で特に患者数が多い国はブラジル(113万5,243人)、パラグアイ(21万9,541人)、ボリビア(8万2,793人)となっている。

デング熱はデングウイルスを持った蚊が媒介する感染症であり、蚊の生息地域である熱帯地方の多い中南米では例年多数の発症が報告されていたが、中南米域内で地球温暖化による気温の上昇が顕著に表れた2019年および2020年の第1四半期(1~3月)は、特に蚊の活動が活発化し、デング熱患者数の増加につながった。

4月以降は南米各国の気温が下がり始め、蚊の活動も活発でなくなるためデング熱の感染者数も増加のペースも緩やかになってきた。しかし年後半にかけて気温が上昇すると、デング熱患者は再び増加することが予想される。新型コロナ患者対応で医療提供態勢が逼迫する国が多い中南米諸国においては、デング熱対策も急務となるだろう。

(佐藤輝美)

(中南米)

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