PPP法を制定、インフラ投資促進を目指すも対象は制限

(ベトナム)

ハノイ発

2020年07月28日

ベトナム国会は6月18日、官民連携パートナーシップ(PPP)による投資に関する法律(PPP法)(64/2020/QH14)を可決した。PPP事業については、これまで政令63号(63/2018/ND-CP)などで規定していたが、2021年1月1日からは新たにPPP法を適用することになる。PPP事業に関する規定が法律に格上げされることで、事業の推進過程における一貫性や継続性の確保が期待される。

PPP法では、対象分野を(1)交通運輸、(2)発電所・送電線(水力発電および電力法による国の独占案件を除く)、(3)灌漑、上下水道、排水・廃棄物処理、(4)医療、教育・訓練、(5)情報通信インフラに限定した。また、BT方式(注)の事業は対象から外れ、BT方式の新規事業は中止となる。計画投資省入札管理局によると、特定の分野に国家の資本を集中させる狙いがあるという。

投資規模は原則2,000億ドン(約9億2,000万円、1ドン=約0.0046円)以上、経済・社会的に困難な状況にある地域の案件や医療、教育・訓練分野では1,000億ドン以上とした。また、インフラ整備や土地収用支援での国の拠出資金は原則として総投資額の50%を超えないことと明記した。

PPP契約条件の一部を明文化

PPP法では事業収益が増減した場合の分配方法を明示した。BOT、BTO、BOO方式(注)のPPP事業による収益が契約で定められた計画の75%を下回った場合、一定の条件を満たすことで、収益計画の75%を下回る減収分に対し、その半分を政府が負担することになる。逆に、収益が計画の125%を上回った場合は、その125%を超える増益分を政府と投資家で半分ずつ利益分配する。

PPP事業契約に適用する準拠法には、これまで外国法も認めていたが、PPP法ではベトナム法準拠になることを明記した。この点は外資企業にとって参入障壁となり得る。

また、国会および首相が投資方針を決定した案件では、一定の条件下で外貨兌換(だかん)保証が適用されるが、保証範囲はベトナム通貨(ドン)による事業収入から支出を控除した後の金額の30%以内と規定した。

PPP法の細則については、現在起草中の政令などで明確になることが期待されている。

(注)BT(Build Transfer)方式は、民間事業者が建設し、行政に移管するところまでを担う。BOT(Build- Operate -Transfer)方式は、民間事業者が建設・運営し、契約期間終了後に行政に移管する。BTO(Build- Transfer -Operate)方式は、民間事業者が建設し、行政に移管するが、運営も担う。BOO(Build- Own -Operate)方式は、民間事業者が建設し、運営と所有を担う。

(庄浩充)

(ベトナム)

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