コロナ下で伝統食品の需要が増大

(カザフスタン)

タシケント発

2020年07月28日

新型コロナウイルスの感染拡大が続いているカザフスタンで、地元の伝統食品の需要が増加している。ジェトロがヌルスルタン市近郊の酪農家に7月20日にヒアリングしたところ、「サウマル(馬乳)」「クミズ(馬乳の発酵飲料)」を買い求める客が都市部から大勢来訪し、特にサウマルは深夜まで順番待ちをする者が出るほど人気となっている。価格の相場(ヌルスルタン市)はサウマルで1リットル当たり1,000テンゲ(約260円、1テンゲ=約0.26円)、1リットル当たりクミズで800テンゲ(約210円)。

写真 サウマル(粉末製品、500グラム)2万5,680テンゲ(63ドル)(ジェトロ撮影)

サウマル(粉末製品、500グラム)2万5,680テンゲ(63ドル)(ジェトロ撮影)

サウマルやクミズ、ラクダ乳を発酵させた「シュバット」は元来遊牧民だったカザフ人の伝統的な飲料で、薬用としても愛用されてきた。サウマルは人間の母乳に近い成分と言われており、吸収がよく、タンパク質、アミノ酸、可溶性脂肪、ミネラル(カルシウム、ナトリウム、リン、カリウム、鉄、マグネシウムなど)、各種ビタミンを含む。肺、肝臓を強化し、血中成分を調整し、糖質バランスをとり、胃潰瘍に効き、滋養を高める効果があると言われている(ポータルサイト「インフォルムビュロー」2017年8月14日)。変質しやすく保存がきかないため、牧場で搾りたてを飲むのが一般的だが、最近では粉末化した商品も販売されており、輸出もされている。

写真 シュバット(液体製品、1リットル)945テンゲ(2.3ドル)(ジェトロ撮影)

シュバット(液体製品、1リットル)945テンゲ(2.3ドル)(ジェトロ撮影)

クミズは気管支炎など上気道の病気に、シュバットは肺病に効能があるとされる(地方紙「オティラル」2020年7月11日)。どちらも免疫機能を高めることから、帝政ロシア時代からサナトリウムなどで結核療養の薬として使用されている(ポータルサイト「エクスプレスK」2020年6月26日)。現在も医師から奨励されており、地方都市カラガンダでは住民が医療に役立ててほしいと、1トンのクミズを病院に寄付している(「テングリニュース」2020年7月13日)。クミズもシュバットもスーパーで気軽に購入できるが、新鮮で加工されていない酪農家直送のものが好まれる。

2020年7月21日現在、カザフスタンにおける新型コロナウイルス感染者数は累計で7万3,468人、回復者数4万5,376人、死者数585人(政府公式ポータルサイト2020年7月21日)で、1日の新規感染者数は1,700人台が続いている。ワクチンや特効薬が開発されるまでは、免疫力向上・病後の体力回復のために一般民衆の自己防衛策としてこれら伝統食品への関心・需要は一層高まることが想定される。

(増島繁延)

(カザフスタン)

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