道路運輸業に対するEU規制、大幅改正へ

(EU)

ブリュッセル発

2020年07月15日

欧州議会は7月9日、道路運輸業に関するEU規制の主要な改正となるモビリティ・パッケージを可決した。同パッケージは、(1)運転手の労働時間・休憩時間などに関する規則PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、(2)道路貨物運輸業等への参入に関する規則PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、および(3)運転手の配属に関する規制とその執行要件に関する指令PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)からなる。

道路運輸業はすでにEUレベルで規制が存在するが、欧州議会によれば抜け穴の存在や執行の難しさから、EU加盟国間で実施状況が異なっていた。同パッケージは、こうした問題を解決するために既存のEU規制を改正するものだ。

労働条件の改善だけでなく、競争条件の是正も

(1)の運転手の労働条件の改善策としては、道路運輸事業者は、貨物の国際輸送を行う運転手が定期的に自宅に帰れるようにスケジュールを設定すること、一定時間を超える休憩時間に関しては事業者負担でトラック外の適切な施設で休憩を取らせることなどが含まれる。また不正行為対策としては、タコグラフ(運行記録計)によるトラックの国境通過の記録の義務化対象車両の拡大などが含まれる。

(2)では、道路運輸事業者が事業登録国以外の加盟国への国際輸送の直後に、当該国で国内輸送を行う「カボタージュ」行為が、取り締まりの難しさなどにより現行法で認められた範囲を超えて乱用されている場合があることから、より厳格な規制を定めている。カボタージュ規制の抜け穴対策として、事業登録国外の一加盟国内での同一車両による貨物輸送に対して、輸送営業の間隔を最低4日間空けることを義務づける。また、事業登録国以外の加盟国において主な事業を行うことで、その事業国での税制、社会保障、消費税、賃金などに関する義務を逃れている事業者に対して、登録国での実際に事業が行われていることの証明や、8週間ごとにトラックを事業拠点に戻すことを義務づける。

(3)の運転手の配属に関する規則は、加盟国間での異なる規制を防ぎ、運転手に対する同一賃金など公正な報酬を確保するために、一部の事業を除き、カボタージュ行為および国際輸送などの事業に適用される明確な法的枠組みを設定する。

ドイツなどで国内輸送費が増加か

同パッケージは、主にドイツなどの西欧諸国内で営業する中・東欧諸国の道路運輸事業者を実質的に規制するものと見られている。同パッケージの影響として、西欧諸国での輸送費が今後上昇する可能性がある。

なお、同パッケージは今後EU官報への掲載を経て、施行される見通し。

(吉沼啓介)

(EU)

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