2050年までに全ての中型・大型トラックをゼロエミッションに、米15州が共同覚書を発表

(米国)

ニューヨーク発

2020年07月22日

カリフォルニアをはじめとする米国15州(注1)およびワシントンDCは7月13日、トラックやバスなど中型・大型車両(Mid-Heavy Duty Vehicles)から排出される温室効果ガス(GHG)の削減のための共同覚書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(以下、覚書)を締結し、同部門におけるゼロエミッション車(ZEV、注2)の市場拡大に協力して取り組むことを約束した。

今回対象となる車両には、大型ピックアップトラックとバン、配送用トラック、長距離配送トラック(ビッグリグ)、スクールバスなどが含まれる。参加州は、こうした中型・大型車両のZEV販売台数の割合を、2030年までに全車両の30%、2050年までに100%にまで増加させること、2025年にはこれら目標値の妥当性を図るための中間査定を行うことに合意した。また、覚書によると、参加州は今後6カ月以内に、12項目の課題解決に向けた行動計画を策定する。計画の遂行に当たっては、ライトビークル(乗用車、スポーツ用多目的車、小型トラックなど)のZEV推進に向けて、カリフォルニア州と9州が2013年に立ち上げた「マルチステートZEVタスクフォース」をプラットフォームとする。なお、覚書には、今回の合意は参加州による自発的な取り組みの結果で、法的拘束力がないことも明記されている。

トラックによるGHG排出量の増加を懸念

環境保護庁(EPA)によると、2018年の輸送部門のGHG排出量は、全排出量の約3割を占めており、業種別では最多となっている(添付資料図1参照)。中でも中型・大型車トラックは輸送部門の23%を占める主な発生源の1つだ(添付資料図2参照)。カリフォルニア大気資源局は「トラックとバスの全車両台数に対する割合は4%であるにもかかわらず、排出量では約25%にも上る。特にトラックの排出量は発生源の中でも最も急速に伸びている上、その走行距離は今後数十年で大幅に増加することが予測されている」と、早急の取り組みを促した。

参加州の1つであるニューヨーク州のアンドリュー・クオモ州知事は7月14日の声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、「州民、特にこれまで環境悪化の影響を受けてきた低所得者地域などでの改善をもたらすだろう」と期待を示すほか、「連邦政府の統率力が欠如しているため、こうした温暖化への対処は州に委ねられている。今回の複数州による合意は、気候変動との闘いにおける州の重要なリーダーシップの役割を促進し、他州が従うべき例を確立していくものだ」と述べた。

(注1)カリフォルニア、コネチカット、コロラド、ハワイ、メーン、メリーランド、マサチューセッツ、ニュージャージー、ニューヨーク、ノースカロライナ、オレゴン、ペンシルベニア、ロードアイランド、バーモント、ワシントン州。

(注2)電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCEV)。

(大原典子)

(米国)

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