乗用車の2019年のCO2排出量は前年比微増、国の排出基準値達成できず

(スイス)

ジュネーブ発

2020年07月14日

スイス連邦政府は7月2日、国内販売された乗用車の二酸化炭素(CO2)排出量について発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。2019年に新車登録された乗用車のCO2総排出量の平均値は2018年より0.2%増加し、走行1キロ当たり138.1グラムとなった(2018年は137.8グラム)。政府がEUの目標値に合わせて設定しているCO2排出量目標値の1キロ当たり130グラムは2019年も達成できなかった。

スイスでは、2019年に約31万4,000台(リヒテンシュタインでの販売台数分を含む。CO2排出量目標の適用などについても同じ)の乗用車が販売されているが、スポーツ用多目的車(SUV)の人気が高く、2019年の乗用車販売に占める比率は51.3%に達している点が特徴。

電気自動車(EV)とハイブリッド車が乗用車販売に占める比率は5.6%で、2018年の3.2%より伸びた。一方、SUV販売増による車両重量増加と、ディーゼル車の販売台数減少(2018年は全体の30.3%だったが、2019年には26.7%)による相対的なガソリン車割合の増加の影響で、車重1,000キログラム平均ベースでの燃料消費量も走行100キロ当たり3.6リットルと、昨年からの改善はなかった。英国調査会社JATOダイナミクスによると、2019年は欧州のほとんどの国で新車の1キロ走行当たりのCO2排出量が増えているが、スイスはCO2排出量が最も多い国となっている。

2019年の罰金総額は7,810万スイス・フラン(約89億340万円、CHF、1CHF=約114円)で、2018年の3,170万CHFから大幅に増加。2020年からCO2排出量目標値は1キロ当たり95グラムに引き下げられる予定だが、スイス自動車販売団体オートスイス(Auto-Schweiz)は1月のジェトロのインタビュー当時(2020年1月29日記事参照)、EVなどの環境配慮車へのシフトにより基準達成は期待できるとの認識を示していた。今回の政府発表を受けた同団体の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、2019年に未達成だったのは2018年9月からの燃費試験方式の変更(注)が主たる理由だと指摘した。また、新型コロナウイルス禍で中断したEVやハイブリッド車、代替燃料車の新規モデル導入が進み、CO2排出量が改善されることに期待を示している。なお、2020年上半期のシェアは21.6%だった。

(注)欧州では、フォルクスワーゲンの排ガス不正問題をきっかけに、標準的な測定として使用してきた「新欧州ドライビングサイクル(NEDC)」から、より実走行状態に近い計測結果が得られる「国際調和排ガス・燃費試験方法(WLTP)」に切り替わり、1キロ走行当たりのCO2排出量の測定値が上昇したと言われている。

(和田恭)

(スイス)

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