ポスト・コロナの日アフリカ関係強化を議論、英インベストアフリカ主催ウェビナー

(英国、アフリカ)

ロンドン発

2020年07月20日

英国企業のインベストアフリカは6~7月、英国と米国、インド、日本、中国に焦点を当て、5回シリーズでアフリカビジネスに関するウェビナーを開催した。そのうち、6月30日にジェトロが協力した新型コロナウイルス感染終息後の日本・アフリカ関係に関するウェビナーでは、三菱UFJフィナンシャル・グループのクリストファー・マークス・マネジングディレクターによる進行の下、官民両セクターのパネリスト4人が日系企業の動向や今後の見通しについて討論。英国をはじめ世界各地から200人近くが聴講する中、日本の積極姿勢を印象付けた。

ジェトロ・ヨハネスブルク事務所の菅野将史次長は、アフリカの企業活動は「新型コロナ禍」で大きな影響を受けているものの、発電所や肥料プラントの運営などを含め、現地で精力的に操業を継続している日系企業も多数あり、日系ベンチャーキャピタルによる現地スタートアップへの投資なども続いていることを紹介。その上で、日アフリカ関係をさらに深化させるには、新型コロナウイルス感染終息後に双方向で人的交流を活発にすることが不可欠だと述べた。

アフリカで広域に展開するフランスの商社最大手CFAOを傘下に持つ豊田通商は、モビリティーやヘルスケア、消費財、インフラを含む技術・エネルギーの4分野を重点領域としてアフリカ事業を展開。同社が出資するトヨタ・ケニアとCFAOケニアで会長を務めるデニス・アウォリ元駐日ケニア大使は、特にヘルスケアや消費財はコロナ禍でも堅調に伸びていると指摘。同社ではコロナがもたらした環境変化を精力的に分析し、成長分野での事業機会を探求している。

伊藤忠商事の松尾敏宏アフリカ総支配人補佐は、2019年の第7回アフリカ開発会議(TICAD 7)以降、同社がシエラレオネでのパイナップル生産・加工、エチオピアでの衣料品生産・輸出、無電化地域向けミニグリッド開発・販売の英国スタートアップ、ウィンチ・エナジーへの出資など、多角化を加速していることを紹介。新型コロナウイルス感染終息後も積極的にアフリカ事業を進める考えは変わらないとした。また、総合商社ならではの世界的な経営資源を生かし、アフリカ企業に対しても域外での事業機会を提供できるとし、現地企業とともに成長する未来を描く。

新たな展開も顕在化している一方、日本全体としてはアフリカの事業機会を十分に取り込めていないのも確かだ。英国政府などが出資する国際機関である民間インフラ開発グループ(PIDG)の大村由紀子取締役は、日本の本社経営層が過度にリスクに焦点を当てることから脱却し、PIDGの保証スキームなども活用してリスク軽減に努めることを提言。討論の締めくくりでは、新型コロナウイルス感染終息後の「ニューノーマル」ではインフラ投資が一層重要になる一方、地球温暖化という世界的課題にも取り組む必要があり、日本企業はこの分野でもアフリカに貢献できると期待を示した。

(アダオラ・キング)

(英国、アフリカ)

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