小麦の対米輸入と国産化推進、アルゼンチンからの輸入依存の解消狙う

(ブラジル、アルゼンチン、米国、メルコスール)

サンパウロ発

2020年06月30日

ブラジルのジャイール・ボルソナーロ大統領は6月22日、国内大手テレビ報道番組BAND NEWSで、「アルゼンチン産小麦への依存度の高さが課題だ」と述べ、メルコスール域外からの調達ルート開拓や、ブラジル北部のマトピバ地域(注)での生産開発を進める必要性に言及した。

小麦(NCMコード: 1001.19.00、1001.99.00)については、メルコスール域内からの輸入は無税で調達可能な一方、同域外からの輸入には対外共通関税(TEC)で10%の輸入税が課される。ボルソナーロ大統領の発言に見られる食糧安保政策の変更は、2019年3月19日のトランプ米国大統領との首脳会談にさかのぼる。会談の共同宣言(通商関連のパラグラフ)で、ブラジルはWTO加盟時の約束として長年果たしていなかった「メルコスール域外からの年間75万トンまでの無関税上限枠」の履行を了承した経緯がある。その後、ブラジル連邦政府の貿易投資政策に関する諮問機関である貿易審議会(CAMEX)は2019年11月12日付CAMEX決議10号で、年間75万トンの無関税上限枠を実際に設定した。さらに6月17日付CAMEX決議53号を公布し、現行の年間75万トンに加え、45万トン拡大することを可能にした。CAMEX決議53号の効力は7月1日から11月17日までとなっており、CAMEX決議10号で既に設けられた年間75万トンの輸入割り当てのうち、85%が使用されるという条件が付いている。この上限枠内であれば、メルコスール域外からの輸入であってもTECが免税となる。

両国の産業界の反応は次のとおり。まず、この施策の必要性をCAMEXに要請したブラジル小麦産業協会(Abitrigo)は6月19日と23日付の発表で、「ブラジル通貨レアルが輸入に不利なレートになっていること、新型コロナウイルス感染拡大の影響で小麦製品への需要が高まっていることを背景に、アルゼンチン産小麦の在庫が不足する懸念がある」と述べている。

一方、アルゼンチン油産業会議所(CIARA-CEC)は6月22日付の現地紙「バロール」で、「アルゼンチン産小麦がブラジル市場で獲得してきた市場の一部を失う恐れがあり、メルコスール域内の経済統合に影響を与えかねない」とアルゼンチン政府に提言したと述べている。ブラジルにとってアルゼンチンは最大の小麦調達先となっており(添付資料表参照)、今後の輸入量の動向が注目に値する。

(注)マラニョン州、ピアウイ州、トカンチンス州、バイーア州のことを指す。各州の頭文字を取ってマピトバ地域と呼ばれる

(古木勇生)

(ブラジル、アルゼンチン、米国、メルコスール)

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