プーチン大統領、国民への演説で個人所得税率の引き上げを提案

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2020年06月26日

プーチン大統領は6月24日に実施した国民への演説で、個人所得税率を13%から15%に引き上げることを提案した。希少疾患を患う小児患者の治療や医薬品・医療機器の購入などに必要な資金を確保することが目的。

大統領は今回の増税措置の対象者を年収500万ルーブル(約750万円、1ルーブル=約1.5円)以上の所得者とし、税率15%を適用する課税範囲は500万ルーブルを超えた部分のみと説明。増税により得られる歳入は600億ルーブルに上ると述べ、小児希少疾患患者の治療、高価な医薬品・機器・リハビリ器具の購入、ハイテク手術の実施に充てるとした。徴税管理に当たっては最大限デジタル技術を駆使して効率化に努めるとし、2021年1月1日に施行したいと述べた。

今回の個人所得税の引き上げについてロシアではおおむね肯定的な見方が示されている。死期の近い患者と緩和ケア施設を支援するホスピス支援基金ベラの創設者ニュータ・フェデルメッセル氏は「今回の増税による税収で希少疾患を患う児童を抱える1,000世帯以上の家族の1年分の支出を補うことが可能となる。年収500万ルーブル以上を稼ぐ国民にとっては、生活に影響を与えない範囲の増税」と評した(「コメルサント」紙6月24日)。

他方で、増税には肯定的でも注文をつけたり、懸念を表したりする声が散見されている。アレクセイ・クドリン会計検査院議長は「具体的な目的のためにロシアで初めて累進税が導入される。税率の変更において重要なことは安定性の確保で、これ以上の変更を施さない約束が必要」と指摘。企業家権利保護大統領全権代表のボリス・チトフ氏は「累進税は社会政策の実施において柔軟に使える効果的なツールだ。一方、増税により給与を過少申告する者が増えるリスクが高まる」とコメントしている(「コメルサント」紙6月23日)。

(齋藤寛)

(ロシア)

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