米自動車団体トップとGM、新型コロナや通商政策などの影響を議論

(米国)

ニューヨーク発

2020年06月25日

ワシントンDCにある戦略国際問題研究所(CSIS)は6月18日、主要自動車メーカーが加盟する米国自動車イノベーション協会(AAI)のジョン・ボゼーラ代表兼最高経営責任者(CEO)と、ゼネラルモーターズ(GM)のグローバル公共政策担当のエベレット・アイゼンスタット・シニア・バイス・プレジデント(SVP)を迎えてウェビナーを開催した。新型コロナウイルスや対中追加関税、7月1日に発効となる米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を含む通商政策など、自動車業界を取り巻く環境とその影響について議論した。

V字回復はメーカーと販売店の努力が奏功

新車需要に関してボゼーラ氏は、3月最終週の販売台数が新型コロナウイルス発生以前の予測値の60%減に落ち込んだものの、6月第2週には4%減までV字回復したことに触れた。その背景には、販売店がオンラインでの販売や、非接触型配送といった独創的な販売方法を新たに取り込み、また、自動車メーカーが貸付期間84カ月間の無金利ローンなどの販売促進策に多くの資本を投入するなど、供給サイドの努力があったことを強調した。

より柔軟なサプライチェーンを

生産に関してボゼーラ氏は、現段階で大幅なサプライチェーンの見直しは業界の主流ではないものの、新型コロナウイルス感染の影響に加え、USMCA下での原産地規則の厳格化や、対中追加輸入関税の影響もあって、一定の地域内でサプライチェーンを完結させる「地域化(regionalization)」が一部で進みつつあるとの見方を示した。

アイゼンスタット氏も、GMは現段階で既存のサプライチェーンを大きく見直すことはないとする一方で、USMCA下での原産地規則の順守を目的に、電気自動車(EV)と自動運転車(AV)の生産拠点であるミシガン州オリオン工場に400人の増員を伴う3億ドルの追加投資を行うなど、通商政策が国内での前向きな投資活動を促すきっかけとなっている、と述べた。さらに同氏は、2011年の東日本大震災で襲来した津波が警告となり、有事に備えて調達先の一極集中を避け、「柔軟性(resilience)」を持ったサプライチェーンの構築を目指すGMの方針を説明した。こうした中で、より複雑になるサプライチェーンの管理技術を企業内で養成する必要性を強調した。

業界は創造性を駆使して対応

新型コロナウイルス感染の状況が今後の需要に与える影響について、ボゼーラ氏は、例えば公共交通機関を避けて自家用車を利用するなど、人々の行動パターンの変化が新車販売に直結するか判断するには時期尚早だとみている。他方で生産に関しては、新型コロナウイルス感染の終息時期が延びれば、製造現場での自動化が加速するなど、労働を取り巻く環境が大きく変化する可能性を指摘した。

また、新型コロナウイルスのワクチン開発を待たずに自動車業界は回復するか、との視聴者からの質問に対し、両者は「回復の時期は明言できないが、3月以降、生産と販売双方の現場で既存のやり方を見直し、創造性を駆使しながら対応してきた。今後もそれぞれの局面に適応していけるだろう」との認識を示した。

(大原典子)

(米国)

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