2020年補正財政法を発表、外資を対象に規制緩和を導入

(アルジェリア)

パリ発

2020年06月12日

アルジェリア政府は新型コロナウイルスの影響から生じた危機と原油価格の下落を受け、6月4日付33号官報PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で2020年補正財政法を公表した。当初1バレル50ドルに設定していた原油価格を30ドルに見直すとともに、2020年の炭化水素輸出予測額を352億ドルから177億ドルに半減した。さらに、2020年の国際収支予測を85億ドルから188億ドルの赤字、財政赤字予測を1兆5,334億アルジェリア・ディナール(約1兆2,267億円、DA、1DA=約0.8円)から1兆9,769億DAに、成長率予測を1.8%から2.6%減に下方修正した。

また、税制面で新車登録税やガソリン税の増税などを行ったほか、投資規制上の重要な変更も導入した。政府は、2020年財政法で外資の出資比率を最高49%に制限する51/49措置(2009年に導入)を緩和したが(2020年1月21日記事参照)、2020年補正財政法では、第49条と第50条で、完成品の輸入・販売業と戦略的な産業分野のエネルギー・炭化水素、交通、鉱業、軍事、製薬を除いて、製造業全般を出資比率制限の対象外に設定した。加えて、同法第52条と第53条では政府による先買権の廃止、第54条では現地で投資する際の現地融資義務の廃止を決定した。同法第59条では、2014年財政法で導入したディーラーに対する自動車関連産業への投資の義務付けも廃止した。

アルジェリアでは、2019年に輸出総額の92%を占めた炭化水素の価格変動が国内経済を大きく左右しているが、同部門の成長率は2018年にマイナス6.4%、2019年にマイナス4.9%を記録するなど、近年は低迷している。また、世界的な需要の低迷などを背景に、原油価格は2020年に入ってから急落した。政府はシェールガスやオフショア油田の開発と再生可能エネルギーの利用拡大を検討しているが、当面は輸出能力の増加が見込まれないため、テブン政権は非炭化水素分野における経済刺激策、経済の多様化や部分的な開放を新政策の柱にせざるを得ない状況だ。

他のマグレブ諸国と異なり、アルジェリアの観光部門がGDPに占める割合は約2%にとどまっているため、新型コロナウイルスの影響で海外観光客数の落ち込みによる外貨収入の減少が国内経済に深刻なダメージをもたらすことはなかった。しかし、政府が3月23日に導入したロックダウンの影響は大きかった。政府は地域や業種によって6月7日もしくは14日から段階的に解除することを決定したが、国内経済不況の早期回復は見込めない。また、フリーゾーンの未整備や利益送金に関する規制・課税など投資環境の課題も多い。一方で、こうした中で発表された2020年補正財政法による規制緩和措置は、外資系企業のアルジェリアでのビジネスを後押しするものとして注目される。

(ピエリック・グルニエ)

(アルジェリア)

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