米国議員団が天然ガスパイプライン「ノードストリーム2」と「トルコストリーム」への追加制裁法案を起草

(ロシア、米国、ドイツ、欧州)

欧州ロシアCIS課

2020年06月11日

米国上院議員団は6月4日、ロシアが建設を進める天然ガスパイプライン「ノード・ストリーム2」(注1、NS2)と「トルコストリーム」(注2、TS)への追加制裁法案を起草した。NS2の完成阻止を目的としたもので、これまで海洋でのパイプライン建設を行う船舶やその販売・リースを行う事業者に限定されていた制裁対象範囲を保険や技術サービス、操業に必要な検査・認証サービスを提供する事業者にも拡大する内容だ。

今回の追加制裁法案は米国上院国際関係委員会に所属するテッド・クルーズ議員、ジョン・バラッソ議員、トム・コットン議員、ロン・ジョンソン議員(いずれも共和党)、ジーン・シャヒン議員(民主党)が作成した。「2019年の欧州エネルギー安全保障保護法」を修正し、制裁対象範囲を海洋でのパイプライン敷設に従事する船舶や当該船舶の販売・リース・供与を行う事業者(2020年1月8日記事参照)に加え、a.船舶の販売・リース・供与を支援する事業者、b.保険・再保険の引き受け、c.技術のアップグレード、溶接機器の導入、船舶との接続作業を行う事業者およびこれらを支援する事業者、d.NS2の操業に必要不可欠な試験・検査・認証サービスを提供する事業者にも拡大するもの。

クルーズ議員は「NS2は米国の安全保障に重大な脅威をもたらすもので、決して完成させてはならないという超党派かつ上下両院のコンセンサスが米国には存在する」と指摘。シャヒン議員は「NS2はウクライナを含む欧州におけるエネルギー独立性を脅かすもの」とし、バラッソ議員は「NS2はロシアの罠。欧州における米国の同盟国のロシア依存を高めるものであるため、我々はNS2の完成に向けたロシアの努力を阻止する」と述べている。

本法案に対しドイツの政治家やビジネス関係者は猛反発している。ドイツ連邦議会経済・エネルギー委員会のクラウス・エルンスト委員長は「米国による域外での制裁導入は友好的な行為ではない上にドイツとEUの主権を侵害するもの」との批判(ロシア高級紙「イズベスチヤ」6月9日)。ドイツ東方ビジネス協会のオリバー・ヘルメス理事長は「EU法への脅威でありドイツと欧州の企業数十社が制裁対象となる恐れがある。欧州のエネルギー問題は米国ではなく欧州の法律に基づいて解決すべきだ」と述べた(ロシア官報「ロシア新聞」6月6日)。

(注1)ロシアからバルト海底を通過しドイツに天然ガスを輸送するパイプラインの第2弾。

(注2)ロシア産ガスのトルコ向けに輸送する黒海海底を通過するパイプライン。

(齋藤寛)

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