経営者連合会が新型コロナ影響緩和のための連帯救済策を要請

(メキシコ)

メキシコ発

2020年06月18日

メキシコ経営者連合会(COPARMEX)は6月15日、新型コロナウイルス感染対策の影響で経営が悪化した企業と、そこで働く労働者を支援する目的の連帯救済策の実施を政府に呼び掛けた。連帯救済策は、「連帯給与」「連帯失業保険」「連帯雇用補助」の3つからなる。

「連帯給与」は、既に4月20日に「団結した給与」プログラム(2020年4月22日記事参照)として要請していたものだ。労働者の給与水準に応じて政府、企業、労働者がそれぞれ負担することで雇用主負担を抑え、雇用を維持する目的だ。COPARMEXによると、既に世界54カ国、中南米ではチリ、アルゼンチン、ブラジル、ウルグアイで導入されている。「不可欠な活動」と見なされず操業できなかった企業に限定して実施すれば、活動再開後の8月まで実施しても、政府にとってGDPの0.7%の負担で済む。

「連帯失業保険」は、3月15日~9月末までに失業した正規労働者に最低賃金(日給123.22ペソ、約591円、1ペソ=約4.8円)に相当する失業保険を最大6カ月間支給するというもの。失業者に最低限の生活を保障することで国内消費を下支えできるため、与党議員などからも導入の必要性が主張されていた。150万人に失業保険を支給してもGDPの0.1%の負担で済む。

「連帯雇用補助」は、良質な正規雇用を増加させた企業に対する補助金で、賃金が高い労働者を多く雇用した企業に、より多くの補助金が支給される。政府は雇用された労働者の賃金水準に応じ、最低賃金の1倍~3倍に相当する補助金を3カ月間支給する。企業は、雇用した労働者を最低でも6カ月間は解雇してはならず、解雇した場合は補助金を返納する。同対策に必要な政府負担は、30万人の雇用増加を想定するとGDPの0.025%。

既に100万人超が失業、1万社近い企業が倒産

COPARMEXによると、政府の企業向け新型コロナウイルス関連支援策はGDPの0.1%にすぎないが、企業とそこで働く労働者はGDPの7%を所得税として支払っている。今回の救済策は合計してもGDPの1%にすぎず、国の債務を少し増やすだけで対応が可能としている。債務を増やさないのであれば、サンタルシア空軍基地拡張、ドスボカス新製油所建設、マヤ鉄道建設など、昨今の国際情勢を考えると今実施することの必然性が乏しいプロジェクトへの支出を連帯救済策に振り向ければ済むと実施を強く呼びかけている。

社会保険庁(IMSS)のデータによると、2020年3~5月に失われた正規雇用は103万366人、4~5月に倒産した企業は9,984社に上る(添付資料表参照)。COPARMEXは、経済のより深刻な崩壊を回避するために今こそ政府は考えを改めるべきだと主張している。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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