ルカシェンコ大統領が内閣を解散、新首相に治安・安保経験豊富なゴロフチェンコ氏を任命

(ベラルーシ)

欧州ロシアCIS課

2020年06月09日

ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は6月3日に内閣の解散を決定、翌4日には組閣を行い前国家軍産委員長のロマン・ゴロフチェンコ氏を新首相に任命した。

今回の内閣解散理由について、ルカシェンコ大統領は「社会・経済や生活の重要な課題をだれが担うかを理解した上で国民が投票できるよう、時の為政者が新政府の顔ぶれを事前に示すべき」(大統領府発表6月3日)とし、解散は1年前から準備を進めていたと述べた(大統領府発表6月4日)。

ゴロフチェンコ氏は、1973年にミンスク生まれの46歳。ロシアのモスクワ国立国際関係大学(MGIMO)を卒業し、治安・安全保障分野の勤務経験が長く、駐アラブ首長国連邦(UAE)ベラルーシ大使、国家軍産委員長などを歴任した。ルカシェンコ大統領は「ゴロフチェンコ氏はさまざまなポストを経験し、外交経験も長く交渉術にたけている。前職では最高レベルの仕事を行った信頼のできる人物」と評した。

新閣僚一覧は添付資料のとおり。副首相級ポストでは、第1副首相にニコライ・スノプコフ氏(前駐中国ベラルーシ大使、元大統領府長官)、副首相にはアレクサンドル・スボチン氏(前ユーラシア経済委員会工業・農産複合体理事、元大統領補佐官)を新たに起用した。閣僚級では、30ポストのうち24ポストが留任となったが、財務相、工業相、情報相、建築・建設相、住宅公共サービス相、国家資産委員長が刷新された。

今回の内閣解散と組閣について、MGIMO政治理論学部のキリル・コクトィシュ准教授は「大統領選後のルカシェンコ政権の方向性を明らかにしたもの。ゴロフチェンコ首相は国際関係に詳しい知識人で軍産複合体、ハイテク産業の利益を代表する人物でもある。知的水準が高く、マネジメント経験も豊富なため、スマートで強い政府となるだろう」とコメントした。

一方、高等経済学院世界政治経済学部のアンドレイ・スズダリツェフ副学部長は「選挙を控え、ベラルーシの内政は緊張状態にある。社会は反ルカシェンコ大統領のムードに包まれており、再選は難しいとみられる。(治安機関経験が長い)ゴロフチェンコ氏の起用は(抗議デモの発生をはじめとする)惨事に備えた保険だ」と評した(ロシア紙「ガゼータ・ルー」6月4日)。

(齋藤寛)

(ベラルーシ)

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