米議会、給与保護プログラム(PPP)の修正法案を可決、利便性が改善へ

(米国)

ニューヨーク発

2020年06月05日

米国議会上院は6月3日、新型コロナウイルスの感染拡大により影響を受けた中小企業向けの融資プログラムである「給与保護プログラム(PPP)」を修正する法案を可決した。主に、借り主が受け取ったPPP融資が返済免除となるための要件を緩和する内容となっている。下院は5月28日に既にこの法案を可決しており、トランプ大統領も近く署名し、施行される見通しだ。

PPPは3月27日に成立した「コロナウイルス支援・救済・経済安全保障(CARES)法」(2020年3月30日記事参照)に基づき導入された。一定の要件を満たせば、融資の全額または一部の返済が免除されるが、事業者からは要件が現実に即していないと批判が相次いでいた。今回可決された「給与保護プログラム柔軟化法案(H.R. 7010外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」では、事業者からの指摘を踏まえて、次の点を修正する内容となっている。

  1. 法律施行日以降に承認されたPPPローンは、返済期限を2年から5年に延長。
  2. PPPローンの利用可能な期限を2020年6月30日から12月31日まで延長。
  3. PPPローンのうち返済が免除となる利用期間について、ローン成立日から8週間以内としていたところを、24週間以内もしくは2020年12月31日までのいずれか早い方に延長。
  4. PPPローンの返済免除額の減殺を免れるための例外措置として設定していた再雇用の期限を2020年6月30日から12月31日まで延長。
  5. 借り主が2020年2月15日~12月31日の間にフルタイム従業員の数を減らした場合でも、次のいずれかの条件を満たせば、PPPローンの返済免除額の減殺を免れる。(A)2020年2月15日時点で雇用していた従業員でいったん解雇した者(もしくはその空席ポストを埋める同等の者)を12月31日までに再雇用できないことを、文書をもって誠実に証明する、または、(B)連邦政府による要請またはガイダンスによって設定された衛生基準や社会的距離、従業員・顧客への安全要件により、2020年3月1日~12月31日の間に、2020年2月15日以前の事業活動レベルに戻れないことを、文書をもって誠実に証明する。
  6. PPPローンの返済免除を受けるための要件として、少なくともローンの75%を給与関連に利用するとしていたところを、60%に引き下げ。
  7. PPPローンの返済開始時期につき、最初の6カ月間まで延期可能としていたところを、ローンの返済免除額が確定する日までに変更する。ただし、借り主がPPPローンの返済免除対象期間(ローン成立日から24週間か、2020年12月31日のいずれか早い方)の最終日から10カ月以内に返済免除の申請をしなかった場合は、借り主は元利金の返済を開始しなければならない。
  8. PPPローン受給者はCARES法で認められていた給与税(2020年3月27日~12月31日に発生する分)の支払延期の対象外となっていたところ、対象とする。

マルコ・ルビオ上院中小企業委員長(共和党、フロリダ州)は6月4日、「経済再開が始動する中、中小事業者がPPPローンを利用する上で必要としていた柔軟性を提供すべく、議会が合意できたことを喜ばしく思う」との声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出している。

(注)上記の1.以外の変更点は、PPPを規定するCARES法の施行日である3月27日にさかのぼって有効となる。

(磯部真一)

(米国)

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