米財務省、対米直接投資で申告を義務化する取引の要件変更に向けパブコメ募集

(米国)

ニューヨーク発

2020年06月02日

米国財務省は5月21日、2月に施行した「外国投資リスク審査現代化法(FIRRMA)」(2020年2月20日記事参照)に関して、一部条項の変更案を官報で公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。主な変更点は、重要技術を扱う米国事業への投資に関して、対米外国投資委員会(CFIUS)への申告が義務となる場合の判断基準が、産業分野ではなく、重要技術を輸出などする場合に米政府の許可を要するか否かになることだ。財務省は6月22日までパブリックコメントを受け付けている(注1)。

現行のFIRRMAの規則では、外国企業による米国事業への投資が支配的投資でない場合でも、北米産業分類システム(NAICS)上で指定された27分野(注3)の1つまたは複数に関連して、FIRRMAが規定する「重要技術」(注2)を生産、設計、試験、製造、組み立て、開発する米国事業に投資する場合には、一部の例外を除いてCFIUSへの申告を義務としている。

変更案では、このNAICSの27分野の基準を削除し、その代わりに、「重要技術」を投資元の外国主体またその関係者に輸出、再輸出、国内移転、再移送(以下、輸出など)する場合に、米国政府の許可が必要かどうかで、CFIUSへの申告が義務となるかを判断するとしている。具体的には当該重要技術に関して、(1)国務省管轄の国際武器取引規則(ITAR)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、(2)商務省管轄の輸出管理規則(EAR)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、(3)エネルギー省管轄の外国の原子力活動への支援にかかる許認可(連邦規則集〔CFR〕Title10 Part810外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、(4)原子力規制委員会による許認可(CFR Title10 Part110外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)のいずれかの輸出管理法令の下、輸出などの許可が必要かどうかで判断するとしている。

また、重要技術を輸出などする場合に、「投資元の外国主体またその関係者」が米政府の許可が必要となる相手か否かの判断に関しては、次に該当する場合としている。CFIUSの審査対象取引(注4)に関与する外国主体で、(1)当該取引により重要技術、重要インフラ、機微な情報(TID:Technology, Infrastructure and Data)を扱う米国事業を直接支配できる、(2)審査対象となるTIDを扱う米国事業への投資を構成する持ち分を直接取得している、(3)TIDを扱う米国事業へ直接投資をしており、当該米国事業に対する権利に変化が起き、その結果、審査対象の取引・投資となる、(4)TIDを扱う米国事業に関してFIRRMAの適用を回避、または迂回(うかい)しようとして行う取引などに関与している、(5)上記の(1)~(4)に該当する外国主体の議決権を直接、間接問わず25%以上保有している。

財務省は官報の最後に、今回の規則変更が適用された場合にどのようなケースで申告が義務となるか、5つの例を挙げている(添付資料参照)。なお、パブコメを経て変更規則が施行されるまでは、現行の規則が適用される。

(注1)パブコメは連邦ポータルサイトのドケット番号TREAS-DO-2020-0012外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますよりオンラインで提出できる。提出されたコメントは全て公開が前提となる。

(注2)重要技術の定義は、米連邦規則集(CFR)Title 31 Part 800.215PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)に記載されている。

(注3)27分野はCFR Title 31 Part 800のAppendix BPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)に記載されている。

(注4)CFIUSの審査対象となる取引などは、CFR Title 31 Part 800.210~213PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)に記載されている。

(注5)FIRRMAの詳細については、対米外国投資委員会(CFIUS)および2018年外国投資リスク審査現代化法(FIRRMA)に関する報告書(2019年8月)PDFファイル(743KB)参照。

(磯部真一)

(米国)

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