米シェール石油・ガス開発の先駆者、チェサピーク・エナジーが経営破たん

(米国)

ヒューストン発

2020年06月30日

米石油・ガス開発の先駆者的な存在だったチェサピーク・エナジー(本社:オクラホマ州オクラホマシティ)が6月28日、連邦破産法第11章に基づく保護の申し立てをテキサス州南部地区連邦倒産裁判所に対して行ったと発表した。

同社は天然ガスを中心に生産を行っており、シェール石油・ガスの開発に必要な水平掘削の開発・実用化でも知られる。2019年における同社の日産量は石油換算で最大48万4,000バレル、内訳は概算で天然ガスが70%、石油が22%、天然ガス液(常温・常圧では液体であるような重質の炭化水素で、液化天然ガスではない)が8%となっている。米国エネルギー情報局によれば、全米の原油生産量が6月19日までの一週間の平均日産量が1,100万バレル、ドライガスの3月生産量が2兆9,188億9,400万立方フィート(1日当たり石油換算で1,760万バレル)なので、同社の米国の生産は石油が約1%、天然ガスが約2%を占める。

報道では同社の負債は2010年から2012年にかけて増加したと伝えられており、シェール関連の事業拡大を狙った結果とみられる。

経営破たんの背景には、多額の債務を抱え格付けが低いシェールオイル生産事業者の資金繰りを支えていた高利回りのハイイールド債の発行、レバレッジド・ローンによる融資、さらにリスク分散のためレバレッジド・ローンを束ねて証券化したCLO(ローン担保証券)によって支えられていた資金調達が2019年以降難しくなっていることに加え、天然ガスが前年から供給過剰でガス価格が低迷していることなどが挙げられる。なお、米国内の天然ガス消費量は、新型コロナウイルス感染の拡大前後でもあまり変化していない。

エネルギー関連の倒産に詳しいヘインズ&ブーン法律事務所の資料によれば、2019年はシェール石油・ガスが供給過剰気味であり、同業界の倒産が2017年の24件、2018年の28件に対し、2019年は42件へと急増しており、チェサピーク・エナジーは前年から再三にわたり報道でも倒産が懸念されていた。

同社が証券取引委員会(SEC)に提出した資料によれば、2020年3月31日時点における同社の流動負債は22億6,000万ドル、固定負債は94億7,200万ドルで、負債総額は日本円にして約1兆2,600億円(1ドル107.07円で計算)となっている。

本申し立てに伴い、同社は負債のうち約70億ドルの債務を解消することで、DIPファイナンス(注)により新たに9億2,500万ドルの融資を受けることになっており、通常の経営を継続しつつ会社再生に取り組む。

(注)倒産手続き開始後も旧経営陣に経営を任せつつ、新たな資金を提供する金融手法。

(中川直人)

(米国)

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