政府、テック企業支援策を発表、買収防衛に向けた投資ファンドを設立

(フランス)

パリ発

2020年06月09日

フランス政府は6月5日、テック企業を対象に約12億ユーロの資金支援策を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ブリュノ・ルメール経済・財務相は、新型コロナウイルスの影響で資金調達に苦しむスタートアップ企業を「巨大IT企業や外国の投資ファンドによる買収から守り、事業拡大を支援するための資金を供給する」と話した。主な資金援助は以下のとおり。

  • 「フレンチ・テック主権」ファンドの立ち上げ(1億5,000万ユーロ)。将来の国家主権に関わる技術を開発するテック企業を外国企業による買収から守り、資金調達で競合企業に負けないよう支援する。必要に応じ、2021年に同ファンドを5億ユーロに拡大する。
  • キャッシュフロー支援として2020年3月に導入したフレンチ・テック・ブリッジ・ファンドに、8,000万ユーロ上乗せする(総額1億6,000万ユーロ)。
  • 政府保証融資を利用できない有望な技術を持ったスタートアップ企業に、公的投資銀行(BPIフランス)を通じて、約1億ユーロ融資する。
  • 世界的なコンクールで優勝したスタートアップ企業を支援する投資ファンド(PSIM)に、1億2,000万ユーロを上乗せする。
  • BPIフランスが運営するイノベーション・コンテスト(i-Nov)のプロジェクト応募期間の延長と2,000万ユーロの追加資金供与などにより、イノベーション支援体制を強化する(総額8,000万ユーロ)。
  • ハイテクに特化したスタートアップ・アクセラレーターの発展支援に向け、1億ユーロのフレンチ・テック・アクセラレーション第2投資ファンドを創設する。

政府は3月25日、スタートアップ企業向けに研究税額控除の前倒し還付、イノベーション支援プログラムで決定済みの補助金の前倒し給付、フレンチ・テック・ブリッジ・ファンドを通じたつなぎ融資支援、政府保証融資など、合わせて約40億ユーロの緊急支援措置を打ち出していた。

経済・財務省によれば、新型コロナウイルスがもたらした危機の影響で2020年3〜4月の資金調達件数は前年同期比32%減、調達額は24%減となった。外国投資家の撤退が顕著で、この動きは今後、加速する見通し。これまでに約5,000社のスタートアップ企業が総額30億ユーロの政府保証融資を受けた。またフレンチ・テック・ブリッジ・ファンドを利用した企業数も20社余りとなり、つなぎ融資の支援金額も約5,000万ユーロに達した。

(山崎あき)

(フランス)

ビジネス短信 27bde7eb8b495e00