第1四半期のGDP、業界ごとに新型コロナの影響分かれる

(ブラジル)

サンパウロ発

2020年06月12日

ブラジル地理統計院(IBGE)は5月29日、2020年第1四半期(1~3月)の実質GDP成長率が前年同期比マイナス0.3%と発表した(添付資料表参照)。

産業別にみると、農畜産業は前年同期比で1.9%、工業がマイナス0.1%、サービス業がマイナス0.5%となった。

農畜産業が好調だった背景として、IBGEは大豆の生産量が向上した点を挙げている。食糧供給公社(Conab)が5月に発表した穀物作柄調査によると、2019/2020年度の大豆生産量は前年比4.6%増、かつ過去最高の1億2,030万トンが見込まれている。この結果について、5月29日付の現地紙「バロール」によると、ブラジル全国農業連合(CAN)のパウロ・カムリ経済技術顧問は「農地では新型コロナウイルス感染の影響を受けにくく、外需も損なわれなかった」と受け止めている。

工業はほぼ横ばいとなった。新型コロナ感染拡大による経済活動の減速のみならず、穏やかな夏で気温上昇が抑えられたことを背景に、「電気・ガス・上下水道・都市清掃」が前年同期比でマイナス1.8%となり、製造業も、自動車工場の一時的な操業停止を余儀なくされたことなどで、マイナス0.8%となった。一方、鉱業は、石油・ガスの採掘活動が活発化したことで、前年同期比4.8%となったことがこれを打ち消した。国営石油会社ペトロブラスは4月27日付レポート「第1四半期の生産・販売報告」の中で、ブラジル南東部沖の大規模油田の一部採掘が本格化したことを挙げており、徐々に経済活動が回復しつつある中国向けのニーズを捉えていると述べた。財・サービス輸入が5.1%となった背景には、同分野の採掘活動に必要な機械・部品への需要があったとIBGEは分析している。

サービス業は、その他サービスが前年同期比マイナス3.4%となったことが影響した。各州・市が新型コロナ感染拡大を抑えるための措置を採用したことで、商業活動が停滞したことが挙げられる。同様の理由で、需要要素別の家計消費も前年同期比マイナス0.7%となっている。

IBGEによると、財・サービスの輸出が前年同期比マイナス2.2%と振るわなかったのは、ブラジルの主要な輸出先であるアルゼンチンの景気低迷が続いていることと、中国が新型コロナ感染防止対策で入国制限や生産活動を一時的に停止したことの影響を受けたと分析している。

(古木勇生)

(ブラジル)

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