2019/2020年度は68年ぶりのマイナス成長に

(パキスタン)

アジア大洋州課

2020年06月18日

アブドゥル・ハフィーズ・シェイク首相顧問(財務・歳入担当)は6月11日、2019/2020年度(2019年7月~2020年6月)の経済白書を発表した。同白書によれば、同年度のパキスタンの実質GDP成長率(暫定値)は、マイナス0.4%に落ち込んだ。同国がマイナス成長となるのは1951/1952年度以来、68年ぶり。

産業別では、最も大きく落ち込んだのは工業で、前年度比2.6%減(前年度比0.3ポイント減)とマイナス成長がさらに悪化した(添付資料表1参照)。工業は労働人口の16%、実質GDP(粗付加価値の合計額)の19.3%を占める。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、3月に外出制限(ロックダウン)などが実施され、工場での生産が停止したことが影響した(2020年3月24日記事参照)。経済白書では、2019年7月~2020年3月までの指標を用いて推計されるため、自動車メーカーなどを含む多くの製造業が生産を停止した4~5月を含めた実際の成長率は、さらに低くなると見込まれる。

実質GDPの61.4%を占めるサービス業も、0.6%減(4.4ポイント減)と縮小した。運輸・通信業が7.1%減、卸小売業が3.4%減、金融・保険業が0.8%増と振るわなかった。一方、住宅サービスは4.0%増、一般政府サービスは3.9%増、その他民間サービスは5.4%と比較的好調だった。

他方、農業は2.7%増(2.1ポイント増)のプラス成長となった。コメやトウモロコシの生産量が前年度比6~7%増と好調で、小麦も2.5%増と収穫が多かった。しかし、2019年末からサバクトビバッタによる食害が本格化し、政府は2020年1月31日に非常事態宣言を出した。同年3月から4月にかけて雨量が多かったため幼虫のエサとなる植物が増え、6月の被害は深刻さを増している。そのため、4~6月を含めた実際の成長率はより低くなる見通しで、来年度の農業生産にも影響が及ぶことが見込まれる。

GDPの約8割を占める個人消費支出が縮退

支出側でみると、実質GDP(支出側、市場価格表示)の78.8%を占める個人消費支出が3.7%減と落ち込み、総固定資本形成(0.1%増)も振るわなかった(添付資料表2参照)。一方、財・サービスの輸出が1.6%増となり、輸入は11.1%減となったため、純輸出はやや改善した。実質GDPの12.6%を占める政府消費支出も10.3%増と経済成長を押し上げたが、全体をプラス成長に引き戻すには至らなかった。

(北見創)

(パキスタン)

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