1~4月の「一帯一路」沿線国への投資は13.4%増

(中国)

中国北アジア課

2020年06月15日

商務部によると(6月3日)、2020年1~4月の中国の「一帯一路」沿線国への直接投資額(金融分野を除く、注1)は、前年同期比13.4%増の52億3,000万ドル、全体に占めるシェアは前年同期より2.3ポイント上昇し15.6%になった。主に、シンガポール、インドネシア、ラオス、ベトナムなどへの投資があったとしている。2019年は前年比3.8%減の150億4,000万ドル(金融分野を除く、注2)と微減したが、増加に転じた。

2020年1~4月の中国の海外への直接投資額(金融分野を除く)が3.1%減の335億7,000万ドルと減少した中で、「一帯一路」沿線国への投資の好調が目立った。

5月末に閉幕した、第13回全国人民代表大会第3回会議の李克強首相の「政府活動報告」では、今後の「一帯一路」政策について、「質の高い『一帯一路』を共同建設する。共に協議し、共に建設し、共に享受することを堅持し、市場ルールと国際的な一般ルールに従い、企業の主体的な役割を発揮させ、ウィンウィンの協力を展開する。対外投資の健全な発展を導く」と言及していた(2020年5月26日記事参照2020年6月1日記事参照)。2019年4月の第2回「一帯一路」国際協力ハイレベルフォーラムで、習近平国家主席が持続可能性の確保を強調しており(2019年5月22日記事参照)、その方針堅持の姿勢がうかがえる。

なお、2019年の「政府活動報告」では、上記のような内容に加え、基礎インフラの相互連結の推進、国際的な生産能力の協力強化、第三国市場の協力拡大などにも触れていたことから、米国などからの批判や新型コロナウイルスの感染拡大の状況を考慮し、「一帯一路」への言及が控えめになったとの指摘もある。

しかし、国家発展改革委員会の寧吉喆副主任は、5月24日の国務院新聞弁公室の全人代に関する記者会見で、「一帯一路」について以下の点などに言及した。

  1. 疫病の感染拡大の防止・コントロールと「一帯一路」建設を統一的に進める。リスクを防止しつつ、従業員の職場復帰と操業再開を秩序立てて推進し、沿線国家の経済の安定と回復を支援する。
  2. 「一帯一路」沿線国家との経済貿易分野の協力、物流円滑化を促進する。貿易企業の操業再開・目標生産量達成を支援し、市場・取引・サプライチェーンの安定の確保、中国と欧州を結ぶ国際貨物列車「中欧班列」のさらなる活用などを図る。
  3. 健康シルクロード、デジタルシルクロードの協力分野を拡大する。開発途上国に向けて疫病防止・コントロールの援助を提供し、「一帯一路」沿線国と医療・衛生分野の協力を強化し、ビッグデータ・「インターネット+(プラス)」・スマートシティ分野の協力を推進し、越境電子商取引・オンライン展示会・遠隔誘致活動・クラウドビデオなどの新たな方式の役割を発揮させる。

世界的な新型コロナウイルスの感染拡大がみられる中、中国が依然として「一帯一路」政策を重視しており、さまざまなかたちで取り組みを展開しようとしていることがうかがえる。

(注1)53カ国への投資があったとしている。

(注2)56カ国への投資があったとしている。

(宗金建志)

(中国)

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