アトムフロート、世界最大規模の原子力砕氷船建造契約を締結

(ロシア)

モスクワ発

2020年05月07日

ロシアで原子力砕氷船を運航するアトムフロートは4月23日、沿海地方のボリショイ・カメニにある造船所ズベズダと、原子力砕氷船「リデル」の建造に関する契約を締結した。完成すれば世界最大の原子力砕氷船となり、北極圏からの液化天然ガス(LNG)輸送力強化が期待される。

契約締結に先立ち、政府が建造費用を全額負担することを決定しており、総額は1,275億7,600万ルーブル(約1,914億円。1ルーブル=1.5円)となる(2020年1月15日付連邦政府決定第11号)。同じ規格の砕氷船はほかに2隻建造予定だが、資金調達方法はコンセッション方式を含めて検討中だ(「コメルサント」紙4月23日)。

砕氷船は氷で覆われる海域を航行する船の前方を進んで氷を砕き、航行支援の役割を持つ。「リデル」は2027年に北極海航路の東部での通年運航を予定している。「コメルサント」紙(4月20日)によると、砕氷船の利用者として独立系ガス大手ノワテクが見込まれており、同社が北極圏のヤマル半島で開発するLNGを通年で輸出することが可能になるという。

アトムフロートのムスタファ・カシカ社長によると、「リデル」には親会社の原子力公社ロスアトムが開発した原子炉「RITM-400」2基が搭載される。最大出力は120メガワットで、氷厚最大4メートルまで航行が可能だ。船の全長は209メートル、幅は47.7メートル、船速は最大で22ノット(氷がない場合)となる。

今回の契約締結では、ロシアで行われるこの種の契約調印の慣例とは異なり、アトムフロートはムルマンスクで、ズベズダはウラジオストクでそれぞれ契約書に署名した。「ロシア新聞」(4月26日)によると、新型コロナウイルス感染拡大予防のため国内各地で導入されている外出規制などの措置を踏まえてのこととされている。

(タギール・フジヤトフ)

(ロシア)

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