インド中銀、再び緊急利下げと経済支援策を発表

(インド)

ムンバイ発

2020年05月28日

インド準備銀行(RBI、中央銀行)は5月22日、金融政策決定会合(MPC)を開催し、政策金利(レポレート)を4.40%から0.40ポイント引き下げ、4.0%にすると決定した。金融スタンスは引き続き「緩和的(accommodative)」を維持する。

MPCは原則おおよそ2カ月に一度の頻度で開かれ、今回の会合は本来6月初旬に開催される予定だったが、シャクティカンタ・ダス総裁は会見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、新型コロナウイルスの甚大な影響を考慮し、会合を前倒しして開催したと述べた。

総裁は政策金利引き下げに加え、市場機能の改善、輸出入支援、金融ストレスの緩和を狙ったさらなる経済支援策も発表した。具体的には、過去発表していた銀行とノンバンクに対する融資先への3カ月間の借入支払い猶予(モラトリアム)をさらに3カ月間追加し、8月末まで延長することなど、これまでの支援策(2020年4月27日記事参照)を強化するものだ。

ダス総裁の会見、およびRBIの発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによれば、今回の会合では全委員が利下げに賛成した。マハーラーシュトラ州やグジャラート州、タミル・ナドゥ州といった主要工業州での感染拡大、インドの総需要の6割を占める個人消費の大幅な減退などが理由として挙げられている。また、今年1月をピークに落ち着いていた食料品のインフレ率がロックダウンによる供給途絶で高騰し、この需給ギャップが数カ月は継続しそうであることも懸念材料となった。また輸出入が大打撃を受け、過去30年で最悪の状態にあることも大きな要因となっている。

一方、明るい兆しとして農業セクターの好調が挙げられており、5月10日時点での収穫量は前年比で4割以上の増加となっているという。農業セクターの好調はインド人口の半数以上を占めるといわれる農業従事者の収入向上につながるため、個人消費の回復を促進するものといえる。

今回のRBIの措置に対し、特にモラトリアム期間の延長を評価する報道が多かったが、一部でさらなる金融支援が必要となるだろうという意見(「エコノミック・タイムズ」紙電子版5月22日)や、RBIの政策金利引き下げの効果を疑問視する意見(「ファイナンシャル・エクスプレス」紙電子版5月23日)も見られた。

(比佐建二郎)

(インド)

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