米国商会が白書を発表、サイバーセキュリティーなどについて問題提起

(中国、米国)

北京発

2020年05月19日

在中国米国企業の団体である中国米国商会は4月30日、2020年版白書を発刊した。白書では、(1)監督管理における透明性や公平性、(2)内国民待遇や競争中立的な政策、(3)国際協力と知財保護を通じたイノベーション創出の3点を重点として多数の建議が記載されている。また、米中経済貿易協議について、米中両国が第2段階合意に達するためには、サイバーセキュリティーやデータ関連政策などにおける制限的規定によって米国企業が中国市場に参入できない問題などの構造問題を解決することが必須と指摘した。

(1)では、会員企業にとって透明性・予測可能性の高い、公平な監督管理が投資を拡大する上で重要であり、法律・法規の解釈の不一致、不透明性が主要な課題となっていることを示した。そのうえで、政府部門の政策の制定や執行における協調、独禁法等の審査結果や記録の公開などを建議した。また、「外商投資法」に規定されているクレーム解決メカニズムについて、活用する企業が報復を受けないと保証するよう政府に求めた(注1)。

独禁法や標準策定プロセスにおける無差別を求める

(2)では、ネガティブリストの削減によって外資の参入規制緩和が進んでいることを歓迎しつつも、参入した業界において外資企業が中国企業と平等に扱われることが重要であり、政府は外資企業が国有企業や民営企業と公平に競争できるよう、競争中立的な政策を策定することが最も重要と指摘した。また、名目上開放されている分野であっても、企業の市場参入を困難にしている制度があり、独禁法や標準策定手続きなどが非関税障壁となっていると指摘した。

このほか、外国の企業や製品・サービスを差別的に取り扱う法律や行政執行、調達などを取り消すこと、クラウドコンピューティングなどの新興分野を外資企業にも同等の条件で開放すること、政府内部文書等を用いて外国製品・サービスを中国国産に置き換えるよう要求するのをやめることなどを求めている(注2)。

(3)では、中国のイノベーションにとってサイバーセキュリティー政策による制限が障害となっていると指摘し、「サイバーセキュリティー法」におけるデータの越境に関する制限を緩和してイノベーションを促進すること、すべての標準制定技術委員会に外資企業を国内企業と平等に参加させ、標準策定プロセスを可能な限りグローバルスタンダードと一致させることなどを求めた。

(注1)外資企業のクレーム手続きについては、手続き等を規定した「外商投資企業クレーム業務弁法外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」の意見募集稿が公表され、4月22日まで意見募集が実施された。

(注2)白書のコンプライアンス章において、米国商会会員企業は「安全かつ管理可能な技術」に関する要求が、中国国産製品と競合する、もしくはより優れた外国製品よりも、国内製品・サービスの購買を促進する可能性があると懸念し、同情報通信章では「安全かつ管理可能な」製品・サービスへの要求が政府調達以外にも、国有企業の調達や「重要情報インフラ」にかかわる部門や産業にも拡大しているとの認識を示している。

(小宮昇平)

(中国、米国)

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