税法改正、法人所得税は軽減、VATの一部品目が増税に

(ケニア)

ナイロビ発

2020年05月19日

ケニアのウフル・ケニヤッタ大統領は4月25日、2020年税法(改正)を承認した。新型コロナウイルス感染拡大の影響を踏まえ、改正には納税者の保護措置や政府の歳入減への対応策が織りこまれた。保護措置の主な対象は中小零細企業、現地法人、および従業員で、改正の概要は以下のとおり。

  1. 法人所得税率を、30%から25%に引き下げ。
  2. 月間総所得が2万4,000ケニア・シリング(約2万4,000円、Ksh、1Ksh=約1.0円)以下の低所得者に対する源泉徴収税の100%免税。
  3. 月間の個人控除額を、1,408Kshから2,400Kshに引き上げ。
  4. 売上税の税率を3%から1%に引き下げ。
  5. 売上税の課税対象は、年間の事業売上高が100万Kshを超え、5,000万Ksh以下の居住者とする。対象企業は、法人税に代えて売上税の納税申請を行うことが可能。
  6. これまで売上税の事前納税として機能していた推定税(Presumptive tax)は廃止。
  7. 医療従事者などが使用する防護用品について、付加価値税(VAT)の免除制度を導入。

一方、政府の歳入減への対策として、一部の免税や優遇制度などが廃止される。ケニアに法人格を持たない(非居住者)外資系の企業や製造業などへの影響が見込まれる。

  1. 非居住者への配当支払いに係る源泉徴収税の税率を10%から15%に引き上げ。
  2. これまで源泉徴収税が免除されていた、特別経済区企業(SEZ)による非居住者への配当支払いについても、15%の源泉徴収税を課税。
  3. これまで製造業者を対象に適用されていた、電気使用料に係る30%の追加控除を廃止。
  4. 投資家を対象とする各種投資控除(所得税法第2表に基づく)を減額。
  5. 非居住者に支払われる再保険料(航空保険に関して支払われる保険料・再保険料を除く)に対して5%の源泉徴収税を課税。
  6. これまで電力会社に適用されていた補償税(Compensating tax)の免除制度を廃止。
  7. 非居住者が提供する販売促進、マーケティング、広告および物流(航空および船舶運送ならびに東アフリカ共同体内の加盟国国民による物流を除く)のサービスへの支払いについて、支払額の20%の源泉所得税を課税。
  8. これまでVATが免除されていた特定の商品およびサービスのVAT免除と優遇制度を廃止。

ケニアのVATの標準税率は16%だったが、4月1日からは軽減税率の14%が課されている(2020年3月27日記事参照)。地元メディアは特に、これまで8%の軽減税率が適用されていた燃油への増税が、さらなる物価上昇を引き起こす、と指摘した(デイリーネイション電子版5月9日)。ケニア製造業組合のサシェン・グドゥカ会長は地元メディアに対し、中国からの供給が平常化に向かう中、目下の懸念は物価上昇などに伴う内需の低下だと述べた(ビジネスデイリー電子版4月5日)。

なお、2020年税法(改正)の詳細は、「アフリカにおける新型コロナウイルス対応状況」を参照。

(久保唯香)

(ケニア)

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