雇用創出のため、技能教育と労使関係の改善に着手

(オーストラリア)

シドニー発

2020年05月29日

オーストラリアのスコット・モリソン首相は5月26日、新型コロナウイルスによって打撃を受けた経済の回復に向けて、「雇用創出(JobMaker)計画」を策定すると発表した。オーストラリアが現在の経済危機から脱し、今後3~5年間で経済的成功を収めることができるよう、まずは技能教育と労使関係の改善に着手する。

技能教育については、必要とされている技能と提供されている教育システムの間に乖離があり、訓練プログラムの開発・更新に平均18カ月もかかっていること、技能教育の質と雇用の結果に対する検証がされていないことなどが問題点として挙げられた。そのため、企業のニーズと将来性を踏まえた技能教育の提供、教育システムの簡素化および一貫性の向上、効果測定、資金の適切な配分を目指すことが示された。

労使関係については、利益を最大化しようとする組合とリスクを最小化しようとする雇用主との間で、既存の労使システムは目的を見失っているとして、雇用を回復させるためには改革が必要だとの見方を示した。労使裁定、労働協約、非正規雇用や契約社員、コンプライアンスと適切な執行、グリーンフィールド協約(注)の5つの分野でワーキンググループを立ち上げ、クリスチャン・ポーター司法長官兼労使関係相を議長とし、雇用主、業界団体、労働組合などの関係者との協議を行い、9月までに結論をまとめるとしている。

なお、雇用に関しては、賃金補助を経済支援策の柱としてきたが(2020年4月1日記事参照)、オーストラリア財務省および税務局は5月22日、企業からの申請内容に不備があったことを報告するとともに、支給対象の見込み数を下方修正した。支給対象者は想定されていた650万人から350万人となり、1,300億オーストラリア・ドル(約9兆2,300億円、豪ドル、1豪ドル=約71円)と見積もられていた予算額は700億豪ドル(約4兆9,700億円)となった。ただし、これによって支給対象を拡張する予定はなく、モリソン首相は「経済支援策は一時的な措置であり、ある時点で国内経済を集中治療室から出さなければならない」と述べている。

(注)新事業を対象として雇用者と労働組合の間で交渉される協約。

(住裕美)

(オーストラリア)

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