米FRB、金融政策の現状維持を決定、経済回復に時間がかかる可能性を指摘

(米国)

ニューヨーク発

2020年05月01日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は4月28、29日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、金融政策の現状維持を決定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。政策金利のフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標は0.00~0.25%に据え置いた(添付資料図参照)。今回の決定は全会一致だった。

危機以前の経済水準への回復には時間がかかる可能性

FOMCの声明文外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、新型コロナウイルスの感染拡大が「短期的には経済活動、雇用、インフレ率に重くのしかかり、中期的には経済見通しにかなりのリスク」をもたらしていることから、3月15日の臨時会合(2020年3月17日記事参照)と同様に、「米国経済が最近の出来事を乗り越え、雇用の最大化と物価の安定という目標を達成する軌道に乗っていると確信するまで政策金利を(現在の水準に)維持する」とした。ジェローム・パウエルFRB議長は記者会見で、「経済活動はおそらく第2四半期に前例のない速度で落ち込むことになるだろう」と指摘し、「利下げは(都市)封鎖やその他の形態の社会的距離(政策)を要因とする経済活動の急激な低下を止めることはできない」が、「この困難な時期に米国経済を支えるため、われわれはあらゆる手段を用いる」とした。

前回までのFOMC(2020年3月17日記事3月26日記事参照)で発表されたFRBの保有資産額拡大についても、「FRBは市場が円滑に機能することを支援する上で必要な額(the amounts needed)の米国債、住宅ローン担保証券(MBS)、政府機関保証付きの商業用不動産ローン担保証券(CMBS)を購入し続けることにより、金融情勢全般に政策が広く効果的に伝わるようにしていく」とした。パウエル議長は「FRBは(家計や企業に対して)補助金を出すことはできない」が、「われわれにできることは力の限りまで行う」と述べた。

経済の先行きについて、パウエル議長は「経済再開が進み、個人消費が回復するにつれて、おそらく経済活動は回復していく」ことになるとしつつ、「ウイルスが完全に制御されていると確信を持てるまで、人々はある種の経済活動に消極的になるだろう」と慎重な見方を示した。このため、経済が「早期に危機以前の水準に回復する可能性は低い」と指摘した。また、「景気回復を確実なものとするため、(議会や連邦政府を含む)われわれはより多くの経済支援を行う必要がある」と述べた。

元連邦準備制度エコノミストで、調査会社コーナーストーン・マクロのパートナーを務めるロベルト・ペルリ氏は「FRBは新型コロナウイルスだけでなく、その余波で長期間続く可能性の高い景気悪化に対しても、長期的な戦いに取り組んでいる」と述べた(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版4月29日)。

(権田直)

(米国)

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