ロックダウン緩和策で酒店に客が殺到、感染危機拡大

(インド)

ムンバイ発

2020年05月08日

インドでは、新型コロナウイルス感染拡大に伴うロックダウンの延長とともに発表された規制緩和策の一環として、5月4日に「非必需品(non-essential)」に指定されていた酒類の販売が許可された。約40日ぶりの再開となった一部の酒店には多くの客が殺到し、密集・密接状態を招いたことを受け、マハーラーシュトラ(MH)州ムンバイ市では翌5日に再び「非必需品」の販売停止が勧告される事態となった(ムンバイ市警察公式ツイッター投稿外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照)。

ロックダウン導入とともに、酒類やたばこといった不要不急の嗜好(しこう)品は非必需品として販売を原則禁止していた。これら商品の販売再開を求める声はロックダウンの長期化とともに大きくなり、今回酒類に関して緩和に踏み切った。これまでも市中では無許可販売が一部で横行し、価格は通常の数倍にもなっていた。

MH州でも、比較的厳しい州独自の緩和ガイドラインの中、酒店の営業再開が認められ、州都ムンバイ都市圏では約800の酒店のうち3割程度が営業を再開した(「タイムズ・オブ・インディア」紙5月5日)。

再開初日の4日には早朝から客が殺到。これまで営業を続けてきた食料品店やスーパーなどでは行政の指導もあり、ソーシャルディスタンスがおおむね順守されてきたが、今回の酒店に殺到した人々はわれ先に購入しようと密集・密接状態となり、現場では怒号が飛び交った。こうした混乱を受け、ムンバイ警察当局は全ての酒店に警察官を派遣することを表明した(前掲「タイムズ・オブ・インディア」)。それでも、ムンバイ市政府(BMC)は強い危機感を抱き、5日夜に市内での「非必需品」の販売停止を再び勧告。翌6日には酒店の営業が停止された。

写真 ムンバイ市内の酒店に殺到する客(ジェトロ撮影)

ムンバイ市内の酒店に殺到する客(ジェトロ撮影)

写真 ソーシャルディスタンスを保ち順番を待つスーパーの客(ムンバイ市内、ジェトロ撮影)

ソーシャルディスタンスを保ち順番を待つスーパーの客(ムンバイ市内、ジェトロ撮影)

同様の問題はインド各地で見られており、感染の拡大が強く懸念される。これまで厳しい対応で新型コロナウイルス対策に臨んできたインドだが、今回の酒店の営業再開許可は大きな混乱を生んでいる。

一方で、MH州の幾つかの地方自治体では、首長(district collector)の権限でそもそも酒店の営業再開を許可しない方針を独自に採用している。また、デリー準州政府は酒類販売に対し、70%のコロナ特別税を課すことを発表(「ミント」5月5日)。同政府は新型コロナウイルスの拡大で枯渇している財政収入の補助とすることも狙っている。

(比佐建二郎)

(インド)

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