欧州委、新型コロナウイルスによる大幅な景気後退を予測

(EU)

ブリュッセル発

2020年05月08日

欧州委員会は5月6日、春季経済予測外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表、新型コロナウイルスにより2020年は歴史的な景気後退が起こるとし、EU27カ国の実質GDP成長率をマイナス7.4%〔2019年11月の秋季経済予測(2019年11月8日記事参照)から8.8ポイント下方修正〕、ユーロ圏はマイナス7.7%(同8.9ポイント下方修正)と予測した。2021年は、EUは6.1%(4.7ポイント上方修正)、ユーロ圏は6.3%(5.1ポイント上方修正)とした(添付資料表1、2参照)。

2020年は全EU加盟国と英国でマイナス成長となると予測。主要国ではフランスとイタリア、スペインが10ポイント前後、ドイツは7.5ポイントの下方修正となった。このほか、ギリシャとクロアチア、アイルランドで11ポイントを超える下方修正、下げ幅が比較的小さかったオーストリアやスウェーデンでも7ポイント前後の下方修正となった。

欧州委は、消費と工業生産、投資、貿易、投資フロー、サプライチェーンが新型コロナ禍の著しい影響を受けたとし、外出制限措置の段階的解除が回復の素地を作るものの、2020年の経済的損失は2021年末まで取り戻せないとみている。投資と雇用の回復はさらに時間を要する見込みだ。バルディス・ドムブロフスキス上級副委員長(経済総括、金融サービス政策担当)は「目下の影響は(2008年の)金融危機よりはるかに甚大だが、その度合いは感染拡大の動向と経済活動を安全に再開し回復するわれわれの能力次第」とし、EUと加盟国レベルでの強力かつ協調した対応策の継続を呼びかけた。

欧州委は、EUの2020年の失業率は9.0%(秋季経済予測から2.3ポイント上方修正)、ユーロ圏は9.6%(2.2ポイント上方修正)、2021年についてはそれぞれ7.9%(1.4ポイント上方修正)、8.6%(1.3ポイント上方修正)と予測(添付資料表3)。時短勤務制度や給与補助、企業支援策による緩和効果はあるものの、労働市場も甚大な影響を受けると分析。特に、短期の雇用契約や観光分野での雇用の割合が高い加盟国での影響が大きいとした。

欧州委は、今回の予測は感染状況や外出制限措置に関する仮説に基づいて作成され、通常よりも不確実性が高いと指摘。感染拡大の長期化や、グローバル・バリュー・チェーンや国際協力に対する態度の変化に加えて、英国との通商交渉の行方など、特に下振れリスクが大きいとした。

(村岡有)

(EU)

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