新型コロナの影響、ホーチミンの店舗物件に値引きも

(ベトナム)

ホーチミン発

2020年05月18日

ベトナムで高い成長率を維持してきた小売り・サービス産業が、新型コロナウイルスの影響を受け停滞(2020年5月8日記事参照)しているなか、店舗物件状況、賃料相場に異変がおきている。3月28日より営業停止となったホーチミン市の飲食店などは、4月23日から再開が認められたものの、依然としてシャッターが閉まったままの店舗も目立つ。

日系不動産会社のRESS不動産ベトナムへのヒアリング(実施日4月29日、以下R社)によると、「路面店の空き物件は、コロナの影響により閉店を余儀なくされた飲食店物件が多く、特に家賃の高い大型路面店が影響を受けている」とし、「新規出店準備を取り止め撤退するケースもある」とした。また、日系不動産会社のエヌアセットベトナムへのヒアリング(5月6日、以下N社)によると、「営業停止措置を機に、撤退を決断する飲食店も出てきている。特に4月から空きが目立つようになった」という。

当面、賃料の下落が続く可能性も

賃料にも変化が見られるようだ。「空き物件が多く出ているため、現時点で2割程度相場が下がっており、当面下落傾向と予想している」(R社)と、賃料が下がっているとの声があがった。一方で、「ホーチミン市は元々、路面店舗物件の供給数が少なく、賃料はかなり高騰していた。値下げで適正価格に近付くが、まだ高い印象だ」(N社)と、値下げしてもまだ高い価格であるとする声もあがった。こうした状況から、「新規契約の動きは緩やかで、顧客は賃料がどこまで下がるか見ている。価格面が割安というメリットはあるが、業種問わず市場全体として当面需要が低迷しそうな点が懸念される」(R社)と、多くは様子見の姿勢を示しているようだ。

既進出企業の中には多店舗展開の好機と捉える向きも

また、既進企業にとっては、外国人の入国制限で出張者や旅行者が激減し、営業再開後も飲食店利用者は少ないが、「家主によっては既進出店には値引きは適用しない場合もある」(N社)との厳しい声も聞こえる。一方で、「交渉の結果、家主が2~3割の値引きに応じたという話も聞く」(R社)という声もあり、「既進出企業にとっては有利な賃料で多店舗展開を検討するきっかけ」(N社)となるなど、現在の賃料の下落をビジネス拡大の好機と捉える動きもある。

(小林亜紀)

(ベトナム)

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