PCR検査の普及に取り組む民間ラボ
(インドネシア)
ジャカルタ発
2020年05月15日
新型コロナウイルス感染症拡大を防ぐためのPCR検査実施や陽性患者への対応は世界中で喫緊の課題であり、インドネシア政府は保健大臣決定2020年第169号および2020年第182号で受け入れ先の病院や検査機関(ラボ)を指定している(注)。しかし、インドネシア各地に居住する邦人はどこの医療機関でPCR検査を受けられるかという周知情報の不足や、医療機関は院内感染を防ぐ検査実施体制をどう整えるか、検体はどのようにラボに届けるか、などの課題もある。
今般、ジャカルタにある民間ラボ(KALGen Innolab Clinical Laboratory、以下「KALGen Innolab」)に豊田通商から出向中の片山太郎ディレクターに、同ラボのサービス内容、PCR検査実施の普及にかかる課題認識などについてヒアリングを行った(5月14日)。
(問)KALGen Innolabの概要と提供するサービスは。
(答)KALBEグループ内の検体検査事業をスピンアウトして設立された受託臨床検査事業会社PT. Innolab Sains Internasional(以下、「ISI」)に、2016年11月、豊田通商およびパートナーの日系検査会社が、第三者割当増資を引き受けて事業へ参加した。そして2017年12月に、ISIが運営する臨床試験センターKALGen Innolab が開設した。現在の従業員は約85人(日本人駐在は1人)、主な業容は医療機関からの検体検査受託で、病理検査 (コンパニオン診断、子宮頸がん検査、病理標本作成/確定診断)においてはインドネシアの民間ラボとして最大規模である。
今回、KALgen Innolabは、下記の3つの理由によりインドネシア保健省の公式要請を受け、民間ラボとしては初めて新型コロナウイルスPCR検査ラボネットワークに加入し、新型コロナウイルスのPCR検査受託を開始した。
- KALBEグループとしてのインドネシアの新型コロナウイルスに対する支援表明をしたこと
- KALGen Innolab が新型コロナウイルスPCR検査実施の要件となるBSL-2検査室およびPCR検査機器を保有していること
- KALGen Innolab がPCR検査に対する検査実績と経験を保有していること
(問)検体はどのように梱包(こんぽう)され、どのような方法でラボに届けられるのか。
(答)本検査の検体(鼻咽頭ぬぐい液と喀痰)はWHOおよびNIIDのガイドラインに従い、三重梱包による搬送を採用した。提携医療機関には三重梱包容器を事前に配布している。検体収集はバイクで行うが、サードパーティではなく、トレーニングを実施した当社の専任者が担当している。そのため、5月14日時点ではJABODETABEK(ジャカルタ首都圏)のみを当社のPCR検査受託のサービス圏としている。
(問)PCR検査の普及に当たり、日系医療機関に何を期待しているか。
(答)当地で高品質のPCR検査を受けられることは、インドネシア(特にジャカルタ)在住の邦人の安心にもつながると考える。しかし、高品質のPCR検査を受けられる状態になったとしても、検査結果が陽性の場合(特に重症化した場合)には、隔離を含めた適切な治療を提供することができる当地の医療機関との連携が必須となる。そのため、検査と治療の両方を提供できる体制構築を日系医療機関に期待している。
(注)指定医療機関と検査機関は添付資料を参照。
(佐々木新平)
(インドネシア)
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