経済活動再開に道筋、対応は地域によってさまざま

(ロシア)

モスクワ発

2020年05月08日

プーチン大統領は5月6日、関係閣僚や地方首長が参加する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策に関する会合(テレビ会議)を開催し、感染拡大抑制策として導入してきた市民生活と経済活動に対する規制の解除に向けた出口戦略の大枠を示した。地方の首長に対しては、政府が推奨する手法に沿った上で、各地方の実情に応じて5月12日以降の規制解除策を早急に定めるよう求めた。

モスクワ市のソビャニン市長は状況を注視しつつ5月12日から市内の全ての製造業、建設関連企業の操業を認めると発言。その一方で、感染拡大の危険性が残ることから、小売り・外食産業を含むサービス業の営業再開は当面見送ると述べた。

国営ニュース専門チャンネル「ロシア24」のインタビューに応じたニジェゴロド州のグレプ・ニキーチン知事は、すべての企業を業種別・感染拡大危険度別で分類し、各企業がそれぞれの分類の枠内で州政府の定める基準を満たした場合、稼働再開許可を出すとした。定められた防疫基準を満たせば、食料以外の小売店舗の営業再開も認めるという。

企業活動の再開を急ぐ背景には雇用状況の悪化がある。アントン・コチャコフ労働・社会保障相は上記会合で「3月と4月の新規失業者数は73万5,000人に上る」と報告した。連邦国家統計局によると、2020年2月の失業者数は324万5,000人。年末までに失業者数が500万~600万人規模にまで拡大するという悲観的な見方もあり、2016年以降減少傾向にあった失業率は大きく上昇するとみられる。

これまで政府は従業員給与支払いのための無利子融資(2020年4月9日記事参照)、「基幹産業関連企業」向けの運転資金の融資(2020年4月20日記事参照)など、企業支援を通じた雇用確保に注力してきた。同会合では「雇用確保のための金融支援は具体的に動き始めている」(アンドレイ・ベロウソフ首相代行)、「総額2,170億ルーブル(約3,040億円、1ルーブル=約1.4円)に上る中小企業向けの納税猶予措置を適用済み」(マクシム・レシェトニコフ経済発展相)との報告があり、企業支援が動き出してきたのは事実だ。ロシア政府はこれら支援の継続とともに、経済活動の再開でCOVID-19の拡大が社会・経済面へ及ぼす影響を最小化したい狙いだ。

このほか、連邦消費者権利保護・福利監督局(ロスポトレブナドゾル)のアンナ・ポポワ長官が今後の市民生活の規制緩和の方向性を発表。政府として、a.屋外での運動や小規模店舗の営業再開等、b.家族での散歩や大規模小売店舗の営業再開、c.公園の開放、すべてのサービス業の営業再開、の3段階に分けて緩和することを提案した。

(梅津哲也)

(ロシア)

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