新型コロナウイルス感染者1,546人、不十分な医療体制に不安

(フィリピン)

マニラ発

2020年04月01日

フィリピン保健省(DOH)は3月30日、新型コロナウイルスの感染者数が1,546人、死者は78人となったと発表した。

3月5日に4例目の感染者を確認して以降、感染者数が徐々に増加したことを受け、3月16日にはドゥテルテ大統領はルソン島全体に外出禁止令および公共交通機関の停止を決定(2020年3月19日記事参照)。その他地域の自治体は、独自に外出禁止令を発令するなど感染拡大防止策を講じているが、感染者数の増加は止まらない。

レニー・ロブレド副大統領は、感染防護服、ゴーグル、マスクといった医療用品を製造できる国内メーカーが存在せず、中国、マレーシア、韓国、インドといった海外からの輸入に頼っている現状に警鐘を鳴らす(3月24日付マニラ・ブレティン)。

世界保健機関(WHO)および日本の厚生労働省によると、日本とフィリピンの人口10万人当たりの病床数を比較すると、日本は1,311床なのに比べ、フィリピンは101床(いずれも2016年時点)と10分の1以下にとどまるとされる。そのほか、人工呼吸器は日本には2万2,254点存在するとされる一方、フィリピンは5,250点、医者の人数は日本が31万1,205人に対してフィリピンは4万775人にとどまる。なお、フィリピンの現在の新型コロナウイルスの1日当たりの検査件数は最大1,000件とされる。

このように医療体制が不十分なフィリピンで操業を続ける日系企業からも不安な声が聞かれる。ジェトロが複数の日系企業にヒアリングしたところ、「主要な病院が受け入れの制限を発表しているなか、仮に日本人駐在員自身が感染し、重症化した場合、公共交通も運行休止で、会社のドライバーが出勤できない状況の中、どのように対応すれば良いか悩んでいる」「一定水準以上の医療サービスが期待できるとされていたセントルークス病院や、マカティメディカルセンターも新型コロナウイルスの入院患者の新規受入れ制限を発表しており不安」といった声が聞かれた。ジェトロがマカティメディカルセンターにヒアリング(3月31日)したところ、PCR検査は行っているが隔離病棟は満室のため入院患者は受け入れられない状況とのことだった。また、マカティ市の日本人会診療所も3月18日以降の休診を発表しており、日本人駐在員や家族が頼ることが可能な医療サービスが十分に提供されない状況だ。

日系企業からはそのほか、「指定病院が発症者、特に重症者に対して十分な処置を提供できるのかといった情報を得ることが難しい」といった声が聞かれた。マカティメディカルセンターの担当者は、マカティ市内の主要な病院が入院患者の新規の受け入れができない状況のため、万が一の場合に備え、マニラ首都圏外の病院を含め、比較的医療水準の高いとされる病院の隔離病棟における病床の空き状況を確認しておく必要があるとした。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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