企業の資金繰りと物流への影響が深刻化
(スイス)
ジュネーブ発
2020年04月02日
新型のコロナウイルスの感染拡大を受けた政府の3月16日の非常事態宣言により、翌日から一般店舗は休業を余儀なくされており、企業活動にも影響が出始めている。国内の経済団体であるエコノミースイスがメンバー企業に対するアンケート(3月19日から23日まで、有効回答数84)を行い、その結果を3月26日に発表した。
産業界の影響は拡大傾向
調査結果によると、調査時点で資金繰りに支障が出ている企業の割合は全体の3分の1で、今後2カ月内に2分の1となると見込まれる。企業間の支払いが急速に悪化していると回答した企業も多数あった。
多くの企業が製品またはサービスの国内売上減少に苦しんでおり、あと2カ月程度は同程度の減少が続くと見ている。政府による閉鎖命令の影響を大きく受けている業種として、ケータリングへのサプライヤー、ホテル、イベント主催者や美容院などがあげられた。衣料業は最新のコレクションを売り切ることが難しくなっており、他の小売業へのサプライヤーも同様である。
海外での販売が難しくなると答える企業の割合は現時点では3分の1弱にとどまるものの、今後2カ月の間に3分の1を超えると見込まれる。また、香料、ビタミン、包装容器、建築資材、アルコール、グリセリン、医療機器、レアメタルや磁石などの素材を海外から調達することが難しくなっている。当初はアジアからの調達に支障が出ていたが、最近になり欧州からの調達にも支障が出るようになった。輸出型産業では、全体の85%が今後2カ月間はサプライチェーン停滞の影響を受けると予想している。
医薬品及びバイオ産業では、病院への負荷増大に伴い治験が進まない問題が明らかになった。新薬開発のスピードが相当落ちており、売上が立たない中、将来の製品化を目指して研究開発活動を行っているスタートアップには特に大きな問題となる。
雇用については、56%の企業が2カ月内に労働力余剰を抱えるとする一方、10%の企業では労働力不足になるとしている。およそ3分の2の企業が部分休業はやむを得ないと考えており、30%の企業が2カ月内にレイオフを行う可能性があるとしている。
アンケート期間中の3月20日に320億フランの新たな大型経済対策が発表された(2020年3月26日記事参照)。発表前に回答した企業で連邦政府の経済対策を評価するとした割合は約半数であったが、発表後の回答企業では4分の3超に増加した。
新たなビジネスの芽も
現状の緊急事態が、デジタル化にはプラスに影響したと回答する企業があった。業務プロセス改善や、在宅勤務への受容が高まったとした。このほか現状外国からの供給に制約がある中、それを代替しうる企業には有利との回答があった。
現在の雇用情勢について、スイス連邦経済事務局のイネイヘン・フライシュ局長は3月28日、部分失業している人間は75万人,労働力人口の15%に上ると述べた。最も影響が深刻なティチーノ州では労働力人口の39%に上る。この2週間でさらに1万3,500人が失業し、失業率0.3%の押し上げ要因となることが見込まれている。
(和田恭)
(スイス)
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