大蔵公債省、2020年のGDP成長率としてマイナス2.9%を見込む

(メキシコ)

メキシコ発

2020年04月06日

大蔵公債省は4月1日、2021年度予算の前提となる経済政策一般基準(CGPE 2021)を策定するための中間報告を提出した。その中で2020年の経済成長率見通しを、それまでの2.0%からマイナス2.9%(注1)に大幅に引き下げた。新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動停滞と原油価格の大幅下落を考慮したものだ。

2020年の財政収支に関しては、油価の下落により石油収入の42.0%の大幅減を見通している。ただし、連邦政府および石油公社(PEMEX)が事前に調達したプット・オプション契約(注2)があるため、代わりに非石油収入(オプション収入)が増えるとみている。他方、経済活動の低迷で税収が4.4%減少するとみている。歳出は、税収に連動する州政府への分配金が8.0%減と大きく減少するが、新型コロナウイルス感染拡大対策のための歳出を増やすため、計画的歳出(政府の判断で増減可能な歳出予算)は1.0%増加する。なお、基礎的財政収支(プライマリー・バランス)の黒字目標(0.7%)は放棄し、2020年度はGDP比0.4%の赤字を見込む。赤字は主に歳入安定化基金(FEIP)など公的部門の金融資産で補い、債務を大きく拡大させることはしないとしているが、それでも公的部門の資金調達必要額は見直し後のGDPの4.4%に相当する1兆776億2,920万ペソ(約4兆8,500億円、1ペソ=約4.5円)まで増える(添付資料の表1参照)。

民間シンクタンクはより大きなマイナス成長を予測

中央銀行が3月24~27日に国内外35のシンクタンクに実施したアンケート調査によると、2020年のGDP成長率見通し平均値は前月の0.91%からマイナス3.99%へと大幅に下落した(添付資料の表2参照)。また、雇用に関する見通しも深刻化し、2020年の正規雇用創出は前月見通しの43万人からマイナス17万4,000人となり、2009年(マイナス17万2,000人)以来となる雇用喪失が見込まれている。

政府は2020年のプライマリーバランスの黒字目標を放棄し、歳出を拡大させる計画だが、その規模については不十分との声がある。非営利団体の経済財政研究センター(CIEP)が3月26日に発表した報告書によると、現政権が重視しているものの、経済効果が乏しいとの批判がある4大建設プロジェクト(ドス・ボカス新製油所、マヤ鉄道、サンタルシア空軍基地拡張、テワンテペック地峡開発)の実施を1年間停止するだけで431億9,700万ペソの財源が確保できる。これらの財源を即効性の高い道路補修などの建設工事に用いるべきだとしている。また、企業に対する雇用維持に向けた社会保険負担補助が重要との見解も示している。

(注1)大蔵公債省は2020年については予測が難しいため、マイナス3.9%からプラス0.1%のレンジを設定しているが、最も確率が高い値としてはマイナス2.9%としている。

(注2)1バレル49ドルを下回った場合に実際の販売額との差額を得る契約。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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