EUのGI保護対象産品などの売上高は771億5,000万ユーロ
(EU)
ブリュッセル発
2020年04月30日
欧州委員会は4月20日、農産品の地理的表示(GI)の経済的価値に関する報告書を発表した。EUのGI保護制度には、農産品・食品およびワインの原産地呼称保護(PDO)と地理的表示保護(PGI)、蒸留酒・芳香ワインのGI保護制度がある。報告書は、これらGIと伝統的特産品保証(TSG)に2011~2017年に登録された、英国を含む2017年末時点のEU加盟28カ国の農産品3,207点を調査対象とした(注)。
報告書は、調査対象産品の2017年の売上高を771億5,000万ユーロ(うち、TSGは23億9,000万ユーロ)、EU産の食品・飲料の全売上高(1兆1,010億ユーロ)におけるシェアを7%と試算。品目別ではワイン(394億2,000万ユーロ)が対象産品の売上高の51%、農産食品(273億4,000万ユーロ)が35%、蒸留酒(103億5,000万ユーロ)が13%となった。また、対象産品全体で、対2010年比で売上高が42%拡大した。
欧州委員はグローバル市場での重要性も強調
調査対象産品の域外輸出額は170億3,000万ユーロとなり、全売上高の22%、全食品・飲料の域外輸出額(1,100億ユーロ)の15.5%を占めた。欧州委のヤヌシュ・ボイチェホフスキ委員(農業担当)は、本物の特産品を求める消費者に高い価額で販売できるとし、GIの生産者への利点を指摘。加えて、「GIは通商協定の重要な側面だ。全世界で産品を保護し、名称の不正利用を防ぎ、欧州の農産品と飲料の評判を維持できる」と述べ、グローバル市場におけるGIの重要性を強調した。
(注)PDOとPGIは、共に特定の場所・地域などを原産地とするが、PDOは産品と産地固有の自然的・人的要素、特別な地理的環境が、PDIは産品の品質や社会的評価、その他属性が、それぞれ産地に起因していることを要件とし、PDOはPGIより原材料の産地・生産・加工についての要件が厳しい。PDOにはフランスのシャンパーニュ地方産のシャンパン、PGIにはオランダ産ゴーダチーズなどがある。TSGは、伝統的な生産・加工法、原料・成分から成ることを要件とするが、原産地との関連性は求められない。詳細はジェトロレポート「EU における地理的表示(GI)(2.1MB)」(2016年1月)参照。
(村岡有)
(EU)
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