OPECプラスで原油生産調整に合意、メキシコは日量10万バレルのみ

(メキシコ、世界)

メキシコ発

2020年04月14日

石油輸出国機構(OPEC)と非加盟主要産油10カ国から成るOPECプラスは4月12日、第10回臨時閣僚会合を開催し、全体で5~6月に日量970万バレルの減産で合意した。7~12月は770万バレル、2021年1月~2022年4月までは580万バレルの減産となる。4月9日に開催された第9回会合では、当初全体で1,000万バレルの減産が計画されていたが、メキシコが求められた自国の減産割り当て量について承諾せず、最終合意しなかった。そのため、第10回会合では合意形成が優先され、メキシコには当初より30万バレル少ない10万バレルの割り当てが認められた。

第9回会合では、参加国がそれぞれ2018年10月の生産量(サウジアラビアとロシアのみ例外的に日量1,100万バレル)を基準に23%削減することでメキシコを除き合意していた。しかし、メキシコは、過去10年以上にわたる生産減退を食い止めるために石油公社(PEMEX)を中心に探鉱開発投資を進めている中で、2018年10月時点生産量(約174万バレル)の23%に相当する日量40万バレルの減産は到底受け入れられないとして会合の場を放棄、同会合では決着しなかった。今回、減産合意決裂を回避できたのは、米国のトランプ大統領の仲介があったからだ。アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領の4月10日早朝記者会見によると、4月9日夜にトランプ大統領はAMLO大統領と電話会談を行い、OPECプラスに参加していない米国が自発的に日量30万バレルの減産を行うことを約束することで、メキシコの10万バレルの割り当てを認めるよう共同議長国であるサウジアラビアとロシアに働きかかけたようだ。

政府の交渉姿勢には賛否両論

AMLO大統領やマルセロ・エブラル外相は、今回のOPECプラスの会合で、大統領が強くこだわったメキシコの方針を貫きながらも、世界的な減産合意の形成を実現したのは、ロシオ・ナーレ・エネルギー相率いる交渉団の大きな成果だとしているが、今回の合意については賛否両論がある。世界的な減産調整に裏付けられて原油価格が上昇することを好感する見方もあるが、一時交渉の席を一方的に離脱したナーレ・エネルギー相に対して、9日夕刻に交渉関係者からツイッターなどの批判が殺到したこともあり、メキシコの対外イメージを大きく損なったという声もある。

また、トランプ大統領に大きな借りを作ったとの懸念もある。トランプ大統領は4月10日の記者会見で、「いずれメキシコに(何らかのかたちで)返してもらうことになる」と発言している(4月11日主要各紙)。さらに、現在の低迷した需要から考えると今回の減産調整では不十分であり、原油価格は多少上向いても大きく回復しないという見方が一般的で、「深刻な財務状況に苦しむPEMEXは、むしろ世界的な減産合意を理由に生産調整して掘削コストの低い油田に生産を集中すべきだ」という識者も多い。PEMEXの原油生産コストは1バレル14.2ドルであり、これには租税公課や金融コストが含まれていないため、現在の原油価格から考慮すると、PEMEXにとって採算が採れる鉱区は全体の2割にすぎないという(「レフォルマ」紙4月13日)。

(中畑貴雄)

(メキシコ、世界)

ビジネス短信 792597343184fe48