データ保護・透明性委員会、外出自粛の状況確認にモバイル位置情報の利用を認める
(スイス)
ジュネーブ発
2020年04月09日
連邦データ保護・透明性委員会(PFPDT)は4月3日、新型コロナウイルス感染拡大防止を目的とした外出自粛の履行状況を確認するために、連邦健康局(FOPH)がモバイル通信大手スイスコムから受領していたモバイルユーザーの位置情報について、データ保護法上問題がないことを発表した。
PFPDTは3月25日にスイスコムに対して、保有するユーザーデータにFOPHがアクセスすることへの見解を明らかにするよう求めていた。スイスコムは3月27日と4月2日に回答した。これによると、スイスコムはモバイルユーザーの移動情報を匿名化し集団統計情報として取り扱うモビリティ・インサイト(MIP)プラットフォームを利用して、スイス国内におけるユーザーの位置情報を視覚化していた。スイスコムはFOPHに対し、100平方メートル単位で20人以上のユーザーがいたかどうかを地図上に表したデータを8時間以上経過後に提供していた。
PFPDTは、その提供について以下の点を認めた。
- ユーザーの位置情報を匿名化した上で集計
- 組織的なデータ利用方法は明らかにされていないが、MIPプラットフォームについては過去数年の運用実績があり、データ保護上の明らかな瑕疵(かし)が認められない
- スイスコムはFOPHにMIPプラットフォームにより視覚化された情報を提供する。FOPHは当該情報の基となるデータにはアクセスできない
- ユーザーの位置情報の集計データについて匿名性が保持されている
これらのことから、FOPHがアクセス可能なデータは匿名化されたデータに限られているとし、PFPDTは、スイスコムによるデータの取り扱い方法とFOPHへのデータ提供はデータ保護法上問題ないと判断した。
一方で、スイスコムとFOPH間の連携やそれにまつわるデータの取り扱いについての公開情報が不足しているとして、PFPDTはスイスコムに対し、一連のデータ処理に係る詳細情報を公開するよう要請した。PFPDTの評価結果とスイスコムが要請に応じて作成した、データ処理に関する質疑応答集はウェブサイト上に公開されている(どちらもドイツ語)。
現在、欧米で新型コロナウイルス対策として採用されているロックダウン政策の履行情況の確認のため、モバイルデータを利用した人の動きの追跡手法が各国で検討されている。スイスでは大手キャリアのスイスコムがもつ個人の位置情報がプライバシーを保護しつつ有効活用されていることが明らかになった。
(和田恭)
(スイス)
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