WTOの財貿易予測、2020年は最大3割減、新型コロナウイルスの影響大きく

(世界)

国際経済課

2020年04月10日

WTOは4月8日、世界貿易見通し(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表し、2020年の世界の財貿易量が前年比で最大31.9%落ち込むと予測した(表参照)。世界の財貿易量は、貿易紛争や経済成長の鈍化により、2019年の時点で既に前年比0.1%減に落ち込んでいたが、新型コロナウイルスによる経済活動や生活への混乱を受け、全ての地域で貿易が減速する。

表 世界の財貿易量(実質)伸び率(前年比)

WTOは、貿易が急速に落ち込むものの2020年後半から回復する「楽観的シナリオ」と、貿易の落ち込みが2020年後半以降も継続して回復が遅れる「悲観的シナリオ」を示した。世界の財貿易量は、「楽観的シナリオ」の場合は前年比12.9%減、「悲観的シナリオ」の場合は同31.9%減となる見込みだ。「悲観的シナリオ」では、貿易への打撃は2008~2009年の金融危機を上回る可能性がある。

地域別にみると、いずれのシナリオでも、「その他」を除く全ての地域で、財貿易量は2桁の落ち込みとなる。輸出では、北米(前年比17.1~40.9%減)やアジア(同13.5~36.2%減)への打撃が大きい。財別にみると、複雑なバリューチェーンを抱える電子機器や自動車分野で、貿易が急減する可能性が指摘された。

サービス貿易も新型コロナウイルスの世界的流行が続く限り、縮小が続くと指摘した。サービス貿易は、上述の予測に含まれていないものの、移動制限や小売りおよび接客施設の閉鎖などにより、感染拡大の直接的な影響を受けるという。

世界の財貿易は2021年に回復すると予測されたが、新型コロナウイルス感染拡大の状況や政策の有効性に依存するなど、不確実性が高い。WTOのアゼべド事務局長は「貿易や生産の減少は避けられず、家計や企業に痛みを伴う結果をもたらす。目下の目標はパンデミック(世界的な流行)を抑制し、人々や企業、国への経済的影響を軽減することだ」と述べた。

(柏瀬あすか)

(世界)

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