欧州原子核研究機構が人工呼吸器を開発

(スイス)

ジュネーブ発

2020年04月17日

欧州原子核研究機構(CERN、ジュネーブ所在)は4月8日、新型コロナウイルス感染症対策に貢献するために3月末に立ち上げたタスクフォースの取組状況を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。CERNは粒子加速器研究のためのコンピューティング資源やプロトタイプ開発に必要な設備やノウハウを活用すべく、地元病院と協力し、世界保健機関(WHO)とも議論を行ってきた。

既に進行中の取り組みとして、殺菌用のアルコールジェルを1トン製造し3月末から地元関係機関に供給を行っていること、3Dプリンターを使って保護バイザーやプラスチック製のフェンスといった感染防護器具の製造を行っていること、分子設計のためのコンピュータ資源を活用してワクチン開発を支援するための研究を行っていることなどが挙げられる。

特に、世界的に需給が逼迫している人工呼吸器については、CERNのもつ分子流出検出のためのガス流量制御技術を活用して、軽度または回復期にある患者用の人工呼吸器(HEV)を開発中で、初期のプロトタイプは3月27日に完成している。現在、圧力制御装置、バルブ、圧力計の改修中であり、臨床専門家とWHOのサポートにより臨床実験を継続している。この人工呼吸器は、電力供給が不安定な環境でも利用できるよう、制御プログラムをマイクロコントローラーに組み込み、バッテリー・太陽光電力・非常用自家発電装置のいずれでも稼働するよう設計されている。

また、他の異なる2チームも吸入器の開発に取り組んでいる。CERNは自身の開発成果に関するハードウエアライセンスを3月に改定しており、完成後、これに基づきHEVの設計情報を開示する予定だ。これにより人工呼吸器を製造する事業者が、地域ごとの規制に適合させ、必要に応じて自由に製造できるようになる。

世界的な人工呼吸器の需要逼迫により、スイスの人工呼吸器メーカーのハミルトンも生産力増強に取り組んでいる。関連技術を用いた人工呼吸器製造への参入も進んでいる。4月11日付「ラジュフィ」紙はボー州プレベンレンジュのBCDマイクロテクニックが精密機械加工技術を生かして人工呼吸器の製造を開始したと報じている。

(和田恭)

(スイス)

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