連邦経済事務局、封じ込め措置の長期化を織り込んだ経済予測の補足シナリオを発表

(スイス)

ジュネーブ発

2020年04月14日

スイス連邦経済省経済事務局(SECO)は4月8日、3月の経済成長予測を補足するネガティブなシナリオPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を2つ提示した。3月19日に発表した経済成長予測では、SECOは2020年の実質GDP成長率をマイナス1.3%とした(2020年3月25日記事参照)が、これは3月16日から開始された封じ込め措置が短期間で終わり2020年後半からは経済回復に向かうことを想定したものであり、また、失業や倒産の副次的な影響は取り入れていなかった。

最初のシナリオは、V字型景気回復である。封じ込め措置は5月末で終わるがスイス経済の生産性は25%低下する。物流の混乱や在庫の欠品の影響により、製造業、企業向けサービス業、商業や建設業も予想よりダメージを大きく受ける。このシナリオの場合、2020年のGDP成長率はマイナス7%となり、失業率は4%に達する。しかし、影響を受けた産業の大部分は政府による経済対策により、大規模な解雇や倒産、債務不履行といった2次的被害からは免れる。2020年後半には回復が始まり、2021年にはV字の急回復が起こり、GDP成長率は8%近くに達する。それでも、2019年末時点の予測と比較した経済損失は2021年までで900億スイス・フランに達する。もし、生産性低下が25%ではなく30%に達する場合は、2020年のGDP成長率はマイナス8%となる。

2番目のシナリオはL字型景気後退である。このシナリオでは2020年前半までは前者と同様の景気減速コースをたどるが、その後の回復が進まない。封じ込め措置の解除は、新たな感染拡大を防ぐため6月以降段階的に行われ、2020年のGDP成長率はマイナス10%に達し、解雇や倒産、債務不履行の連鎖が起こる。経済回復は2021年に入ってからであり、同年の経済成長率は3%にとどまる。

失業率の上昇と封じ込め措置の長期化の両面から消費が低迷する。失業率は2020年4.5%、2021年6%となり、一時的に最大7%に達する。設備投資も2020年は減少し、2021年でも回復しない。国外からの原材料の調達に多数の企業が苦しみ、イノベーションや投資能力が影響を受け、生産能力が中長期にわたり低下する。2019年末時点の予測と比較した経済損失は2021年までで1,700億フランに達する。

現時点では、新型コロナウイルスの経済影響に関するデータが限られていることから、政府専門家会合は4月後半にも経済予測の改定を行うこととしている。

(和田恭、マリオ・マルケジニ)

(スイス)

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